第3話

9月11日


なんだもう、寝れてもいないのにカラスが鳴き始めた。

眠れない日には、まぶたの裏にいつだって君の後ろ姿がぼんやりと色を残す。

輪郭はハッキリしていない。メガネを外したときのような…水彩画で、筆をぽてり、ぽてりと置いて描いたような。濃淡は筆に任される。君の、ああ、まあるく小さいショートヘアは歩くたびにしゃらりと揺れて、気を引かれて猫みたいに飛び付きたくなる。


輪郭だけじゃない、顔も声も仕草もぼんやりとしか思い出せないのだが、元気な見た目に反して少し低めの、落ち着いた声でいつだってゆっくり瞬きをしてこちらを見、問いかける。

ねぇ、何かあった?

僕が少しでも黙ったら変な顔をするとこうだ。君の心はいつだってまあるくて、広くて、柔らかくて。誰かの心の刺やひび割れ散った破片までも包み込んで、暖かい鼓動で寄り添ってくれる。悔しいけれど、君は誰にとっても素敵な人だ。


君に会えたこと、友達になれたこと、柔らかさというものすごい優しさを知ることができたこと、僕はすごく誇りに思っているよ。悔しいけれど。

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