転生でなぜ鬼になる?

油布

この世界の神話編

世界の始まり

異世界には魔力が満ちていた。


それは、世界の創造主である最強の存在、3体しかいないドラゴンと呼ばれる龍たちの長、〈極炎龍〉ボルケーノが自身の魔力で世界の創造を行ったからだ。







彼が生まれたのは宇宙ができたすぐ後であった。


彼は、強大な魔力の持ち主だった。


その魔力量は魂のみの彼の生存本能を刺激したほどに。


当時完全なる自我の持ち主ではなかった彼は機械のような正確な解析能力を魂の中に秘めていた。


その解析能力を生まれてすぐ発動させたのが幸運だったのである。




魂を脅かされた自分の魔力に恐怖する彼だったが、その対処法はすでに解っている。


魂に記録された魔力をためる器を作ることで、魔力の暴走を抑えることが可能と思ったのだ。


その器こそが肉体である


思いついたら即実行。


それは彼のモットーだ。


それを実行するために彼は自らの魔力を使い肉体を作成する。


その姿形は、西洋の龍の姿をしていたのと、80メートル程の巨体。


色は鮮やかな深紅で、金色に輝く目と猫のような瞳孔が見るもの全てを恐怖させそうな威圧感があった。


その姿と司る属性が決め手となり、彼は〈極炎龍〉ボルケーノと呼ばれるようになったのだ。






彼は次に星の創造を行った。


このままでは不便と、肉体を持ち明確な意思を手に入れたボルケーノが思ったからである。


彼の作るは8万㎞程の円周をした球体。


地球の約2倍だ。


それもまた魔力で作ってあるため、彼の意思に反応する。


大地は草木に覆われて豊かになっていく。


徐々に内部に岩がはえてきたりする




雨が降って大地が削れたが削れた所にたくさんの水が溜まり、岩がだす塩化ナトリウムが水をしょっぱくしていく。


海の完成だった。




彼の生活はそれこそ暇で暇で仕方なかったのだが、その生活は1億年程で終わりを告げる。


そしてさらにはその2億年後ごろにもっと楽しくなりそうなことが起きるのだ。




ボルケーノが生まれてから3億年ほどたっただろうか。


海はすっかりしょっぱくなっていた。


そして…


海の上でボルケーノの弟か妹と思わしき存在が誕生した。


なぜなら、ボルケーノと同じ行動をとったからだ。


それに、わずかだがDMAに同一性を感じたのだ。


そのことが、ボルケーノは嬉しかった。


自分しかいなかったのだから。


さらにうれしいのが、その者はボルケーノに向かって飛んできた。


話せるチャンス、そうボルケーノは思う。


「よう、俺が、お前の兄だな。まあ、好きなように呼んでくれや」


躊躇なく日本語を話すボルケーノ。


それにも理由があるのだ。




2億年前、不思議なことが起きたのだ。


彼が物理法則と魔法法則の両方を極めて数百年、彼は〈元素魔法〉『次元ディメンジョン爆発エクスプロージョン』を行った。


爆発魔法最強の威力を発揮するその魔法は空間にさえ干渉力を発揮する。


簡単に言えば、空間をゆがませることができるのだ。




偶然か、必然か、


その歪みを通じて彼は異世界…つまりは地球の様子を見ることができたのだった。


流石というか何というか彼は天才的知能の持ち主である。


すぐ言語を理解した。


つまりそういうことである。




彼はその者に対して必死に言葉を教えた。


その結果としてその者は言語を覚えることに成功する


「よろしくね!あにぃ!」


無邪気な一言で、ボルケーノは満たされる。


見ることができても、しゃべることはできなかったのだ。当たり前である。




性格としては女子である彼女はボルケーノと真逆の感じだった


西洋の龍という見た目は同じだが、60メートルと、ボルケーノよりは小さい体。


色はラピスラズリのような深い藍色で、目は漆黒。


司る属性は水、もしくは氷だ。


彼女は海の支配者として〈大海龍〉リヴァザインと呼ばれるようになるのだった



それからさらに2億年が経過した。


ボルケーノは自分の作った火山で休んでいた。


リヴァザインはというと、支配領域である海で眠っていた。


日々は退屈極まりなかったが、だからこそであろうか


その者の出現にいち早く気付いたのだ。




緑色の80メートルを超える巨体。


目はボルケーノと同じ金色だが、そこに輝きなどない。


戦闘への要求心で染まっていたのだ。




「てめえ、俺と勝負しやがれ!」




ボルケーノに教わらずにペラペラと日本語を話す緑龍。


ボルケーノは少し驚いたが、人の姿となり立ち上がる。


「はあ?なんじゃてめえ、俺と人の姿で勝負するっていうのか?なめやがって」


「フッ。俺は誇り高いからな。どうせなら指も使わず相手してやる」


余裕のボルケーノとその態度に怒る緑龍。


1秒にも満たない時間で2人は戦闘を開始する。




だが。




ボルケーノと緑龍では実力が違いすぎる。


5億年もの間の差は大きいのだ。




大技をぶっ放す緑龍だが、かわされてしまったら意味がない。


完璧な順序を踏んだ技の力をもって、緑龍は倒されてしまったのだ。







「ああくそっ!なぜこいつはそんなに強いんだっ!」


怒りながら緑龍が言う。


「残念だったね。あにぃは強いからさ」


それにこたえるのはリヴァザインだ。


事実、リヴァザインと緑龍が戦ってもリヴァザインが勝つだろう。


そんなリヴァザインでさえボルケーノには勝てないのだから緑龍が勝つのは不可能なのだ。


「ま、上には上がいるってもんだ」


そう言うボルケーノ。


「なんだ、あんたにもいるのか?」


という緑龍に、リヴァザインが


「うんにゃ、無いでしょ」


という。




いつしかボルケーノは緑龍と戦うのが日常茶飯事になっていた。






その緑龍は、草木の管理者として、〈緑草龍〉フィルフィーンと呼ばれるようになるのだった。




・・・・・・・・・・




フィルフィーンが龍帝に仲間入りしてから1億年がたつと、徐々にいろいろな種族が増えてくる。


その中で、鬼神と呼ばれる存在が2人生まれた。


彼と彼女は子孫を増やすことを考えて、兄妹で結婚を果たす。


その結果、4名の子供が生まれた。


子供たちは名前を付けられて、大切に育てられたのだった。


その名は……


長女:ネア




長男:リア




次男:ユア




末っ子:シア




という。






数年たち、子供たちは成長した。


そのうちの1人に、ボルケーノは恋をする。


長女のネアである。


2人の恋は成立。


2人は結婚したのだった。









ネアは1人の子供を産追うむ。


名はネツ。


真紅の髪と金色の瞳が特徴の、神ボルケーノに次ぐ実力を持っていた。






ネツが4歳になった時、ボルケーノの思い付きでスキルが作成される




ボルケーノ:レジェンドスキル.『原点頂者ハジマリノモノ』.『火山炎極ボルケーノ


リヴァザイン:レジェンドスキル.『解析の母カンジルモノ』.『大海氷極リヴァザイン


フィルフィーン:レジェンドスキル.『解明法則ナジャ』.『緑草樹極フィルフィーン


ネア:レジェンドスキル.『龍竜王女ドラゴクイーン


ネツ:『大英知王ナタトゥヴァ』.『炎光陽王ネツ




そんな思い付きがその心を傷つけるとは思わずに…








ネツが8歳になったころ。


突如ボルケーノが暴れだした。


それに共鳴し、リヴァザインとフィルフィーンも暴れだしたのだ。


ネアとネツは暴れださなかったので、ネアは『龍竜王女』を発動させてボルケーノを抑えようとするがかなわない。


そのスキルで抑えられたのはフィルフィーンだけだったのだから。






――なぜボルケーノが暴走したのか。


その原因は、肉体にある。


ボルケーノの魔力を抑えていた肉体だが、器には限界がある、ということ。


適度に捨ててやらないとそのうち溢れ出す。


ボルケーノの場合、『次元爆発』を誤爆させている時点で溢れて暴走しだしていたのだ――






ボルケーノは無差別攻撃を開始する。


もちろんネアも攻撃対象に入っている。


ネアとフィルフィーンは必死に対応するのだがむなしく、通用しない。


そして…


ネアがボルケーノの攻撃を受けてしまったのである。







(私の精神が崩壊してきた…このままでは時間の問題か)


ネアはそう考える。


ボルケーノの攻撃は肉体だけでなく精神や魂すら砕くものだった。


ネアはそのことを理解して自らの命に残された時間を正確に感じ取ったのだ。


(このままじゃ終われない、せめて彼を元に戻さなくては)


そう思ったネアはボルケーノに抱き着いた。


「元に戻ってください。早く…」








ボルケーノが意識を取り戻したのはネアの精神が崩れて亡くなった後だった。


ボルケーノは見た。


見てしまった。


ボルケーノに笑いながら抱き着いているネアのことを。


しかしその体は冷たく、息などしていないし心臓も動いていない


「ネ……ア……?」


ネアは応じない。


「ああああ!なぜだ!なぜ死んでいるんだ!やめ、やめろ!俺を一人にするな!やめろ!」


そう嘆くボルケーノを見ているのは二人。


リヴァザインとフィルフィーン。




否。




もう一人いた。


その名はネツという。




「パパ……?ママ……?」


そんな声が鳴り響く。


「え?なに?ママ?ママ死んじゃったの?え?なんで?」


混乱する声。徐々に焦りが見えてくる。


「噓だッ!認めないッ!」


今度はネツが暴走しだす。


だが、リヴァザインとフィルフィーンでは止めようがなかった


水魔法は蒸発し、氷魔法は融けていき、草魔法は燃え尽きた。


ネツを止められるのはもはやボルケーノだけだったのである。








「やめろ!」




刹那。


一瞬で人型になったボルケーノがネツを抑える。


ボルケーノに抱きかかえられたネツは呆けながら言う。


「なんで…?なんでなのっ!なんでパパはママを殺しちゃったの?なんでよ…なんで私はこんな時にお昼寝してたのよぅ」






「うわああああああ!」




ネツが泣き、ボルケーノやリヴァザイン、フィルフィーンまでもが涙をこぼしていた。




龍たちの暴走は、ネアの死で幕を閉じたのである。

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