G.B.3

笹岡悠起

Two Wheeler

――「ドガガッ」学食に二つの椅子が倒れる音がほぼ同時に響く。


「あーっ! ふざけんなコラっ!」

「やんのか、ふとし、テメーッ!」

 と立ち上がり胸倉を掴み合う二人の男達。

 周囲からは「またバイク部よ……」とひそひそ声が聞こえる。


「ちょ、ちょっとやめてくださいよー」サークルに二人しかいない四年生の先輩方はことあるごとに揉める。それも大抵がどうでもいいような内容。因みに今回はホンダのCB1100Fとカワサキのゼファー1100、椿ラインでどっちが速いか。本当にどうでもいい。


 学内で唯一のバイクサークル〝Two Wheeler〟は創始者のこの怖いお二人の先輩方と僕の後輩の一年生一人以外誰もいない。最近は女性ライダーも多いというのに先輩方の所為で、女の子が一人も寄り付かない。


 このサークルには三年生がいないので先輩方が卒業したら僕が部長になる。

 絶対に僕の代でもう少しお気楽にツーリングやバイクを楽しめるサークルに改革してやる。


 そして女の子の部員を増やすんだ――

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