学校一の美少女に子供が出来るまで罰ゲームで付き合うことになったと言われ迫られてます~本当に罰ゲームで俺に告白したの?~

しゆの

罰ゲームで子供が出来るまで付き合うのっておかしくない?

上田大地うえだだいちくん、私と付き合ってくれませんか?」


 放課後の学校の屋上……高校に入学して二度目の春の日に告白された。

 彼女の顔はほんのりと赤くなっており、少し緊張しているようだ。

 俺の名前を呼んだことから、他の人と間違って告白したわけではないだろう。


「買い物に付き合ってほしいということ?」


 確認のために一応確認を取ってみる。

 もし、告白じゃなかったらこちらが恥ずかしい。

 机の中に手紙が入っていたので、買い物に付き合ってというのはないだろうが。


「彼氏彼女の関係になりたいから告白したので、買い物に付き合えとは違います」

「何であの碓氷雪音うすいゆきねが俺に告白なんて……」


 彼女──碓氷雪音は学校一の美少女言われている。

 肩ほどまであるサラサラとした銀色の髪、長いまつ毛覆われた藍色の大きな瞳、透けるような乳白色の肌は学校一美少女と言われるのにふさわしいだろう。

 学校一の美少女、成績優秀、運動神経抜群、品行方正の彼女はかなり告白されるらしく、あまり接点のない俺の耳にも毎週のように告白してフラれた男の話が届いてくる。

 基本的には優しく…というか柔らかい対応している彼女であるが、他人を内側に入れる気がないようにも感じさせる。

 一年の時だけで五十回を超える告白をされたと噂で聞いたし、異性に対して警戒するのは当たり前のことだ。

 告白してきた相手には容赦なくフるらしく、名前に入っている氷や雪のように冷たい一面もある。

 ちなみにあまり話したことのない俺の名前を知っているのは、今年──つまり二年生から一緒のクラスになったからだろう。

 そうでなければ俺の名前を覚えているわけがない。

 あまり知らない人と付き合う気はないので、早く帰ってアニメを観たいのが正直な気持ち。


「勘違いしないでほしいのは、私があなたを好きだから付き合いたいというわけではないのです」

「……どういうこと?」


 普通は好きだから付き合うはずなのに、碓氷は俺のことが好きではないようだ。

 どういうことだろうか?


「私は罰ゲームであなたに告白しただけに過ぎません」

「罰ゲームね……」


 罰ゲームで告白するのはラノベでたまにある設定だ。

 普通は言うものではないと思うが、好きだと勘違いしないでほしいからだろうか?

 あまりイチャイチャしたくないのであれば納得は出来る。

 罰ゲームで俺に告白なんてしないでほしいが。


「はい。子供が出来るまで付き合うことになりました」

「……何て?」


 子供が出来るまでというのは気のせいだろうか?

 いや、間違いなく碓氷は『子供が出来るまで』と言った。

 最近の罰ゲーム告白は子供が出来るまで付き合わないといけないの?


「あなたは耳が悪いのですか? 子供が出来るまでです」


 俺は告白していないが、碓氷は時と場合により毒舌になるようだ。

 藍色の冷たい視線と言葉が突き刺さる。

 好きでもない相手には何を言われてもどうでいいのだけど。


「耳は正常だ。罰ゲームで子供が出来るまで付き合うっておかしいだろ」

「ルールなのだから仕方ありません。断られた私はあなたに永遠と告白しなければなりません」

「色々とおかしいだろ」


 いくらルールだからって子供が出来るまでって言う必要はない。

 罰ゲームと説明して、学校ではイチャイチャし、放課後は一緒帰って適当な場所で別れればいいだけだ。

 なのにいちいち言うなんて少し違和感を感じる。


「別におかしくはないのでは?」

「おかしい。普通は罰ゲームで子供が出来るまで付き合うとかないから」

「ルールなのですからどうしようもありません」

「好きでもない、罰ゲームで告白してきた相手と俺が付き合うとでも?」


 学校一の美少女である碓氷と付き合ってしまえば嫉妬されることは間違いない。

 本気で好きであれば友達から始めるのもいいが、罰ゲームで俺が付き合う義理はない。

 他の男であれば、少しイチャイチャ出来るだろうし嬉しいかもしれないが。

 俺は生憎学校一の美少女に告白されても面倒としか思わない。


「付き合ってもらわないと私が困ります。それに付き合っても付き合わなくても変わらないと思いますよ。今日断られたら明日に教室で告白するつもりですから。付き合えるまで毎日……」

「それは止めてくれ」


 教室で告白されては、他の人から何を言われるかわかったものでないだろう。

 嫉妬されることはもちろんのこと、卒業まで陰口を言われること間違いなしだ。

 俺だって高校生なのだから彼女が欲しいと思ったことはあるし、イチャイチャしたい気持ちもある。

 だからって好きでない人とはしたいと思わない。


「だったら付き合いましょう」

「他の人と付き合うという選択肢は……」

「ありません」


 即答されてしまった。

 他の人が嫌ということは、俺でなければいけないということだ。

 罰ゲームで指定されているのか本人が指命したかはわからないが、俺からしたら迷惑でしかない。


「付き合って俺にメリットがあるのか?」


 多少はイチャイチャ出来る可能性はある。

 だけど学校一美少女と付き合えば注目されることはわかりきっているので、出来ることなら付き合いたくない。

 メリットがないなら尚更だ。


「私は料理が得意なので毎日作ってあげますよ」

「料理……を?」

「告白された時は面倒くさそうな顔をしていたのに、料理と聞いた途端に目が輝きだしましたね……」

「ご飯を食べるのは好きだから」


 食事は生きていく上で必要な行為なので、美味しい料理が食べられるのに越したことはない。

 本人が得意と言ってるからには、相当美味しいご飯が作れるのだろう。

 料理が作れるというのはポイントが高い。

 何故なら俺は料理が全く作れないからだ。

 今の時代はコンビニや出前でなんとでもなるが、美味しい手料理を食べたくなる時はある。


「そうですか。あなたは一人暮らしみたいですし、どうせコンビニで買った物やスーパーの惣菜で済ましているのでしょう?」

「何で知ってる? まさかストー……」

「違いますよ。私は今年から一人暮らしを始めたんですが、同じマンション内であなたを見かけました。一人暮らし向けのマンションに家族で住むわけないでしょう?」

「そうだな」


 去年の春……高校入学から両親の都合で1LDKのマンションで一人暮らしを始めた。

 理由は良くわからないが、いきなり「一人暮らししてね」と言われて昔住んでいたこの地に戻ってきた。

 元々一人暮らししてみたいと思っていたし、異論なく一人暮らしを満喫している。

 ただ、料理だけはどうしようもない。

 碓氷の言う通り、コンビニかスーパーの惣菜で済ませている。

 ちなみに学校まで徒歩で二十分ほどだ。


「毎日美味しいご飯を食べれるのですし、メリットがありますよ。それに……」


 今までこちらを向いていた蒼い瞳は恥ずかしそうに視線を反らす。

 顔は真っ赤になっており、言いたそうな言葉を言い出せないでいるみたいだ。


「その……子供が出来るまで、ということは、つまりはそういうことです……」


 今の台詞がやっとのようで、消え入りそうな声で言ってきた。

 恥ずかしいなら言わなきゃいいのにと思ったが、つっこむのは止めておく。

 そのうち恋人同士がするような、濃厚なイチャつきが出来るということだろう。

 大抵な男であれば美少女が誘惑しただけで堕ちるだろうが、生憎俺は他の男違って単純じゃない。

 だけど……。


「毎日美味しい料理が食べれるならOKだ」


 罰ゲームで告白してきた相手だろうと、料理が食べれるというメリットは大きい。


「色気より食い気ですか。単純ですね」

「ほっとけ」


 他の人のように性欲の塊の男よりいいだろう。


「とにかくよろしくお願いしますね、だいくん」


 了承してくれて良かった……みたいな笑みを向けてくれた。

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