第24話:見せしめ・皇太子視点
私は決断するしかなかった。
成功するか失敗するかに、大陸の命運がかかっている、重大な決断だ。
とてつもない重圧がかかる決断だが、グズグズする事も逃げる事も許されない。
それで、自分が続けられる方法を選んで決断した。
ミルバル皇国皇太子としての名声を捨てる覚悟で、厳しい決断を下した。
侵略者としての汚名に加え、残虐非道な外道という汚名を決断をした。
「殿下、公開拷問の用意ができましたが、今からでも私の指示に変更できますが?」
プランケ伯爵ジーガン卿が、自ら進んで汚名を被ると言ってくれる。
私もその策を全く考えなかったわけではない。
皇国の、いや、大陸の事を考えて、私が汚名を着て皇国民に神を敬えと命じるのと、ジーガン卿が汚名を着て皇国民に神を敬えと命じるのの、どちらが確実に皇国民の考え方を変えさせられるのかを考えた。
「いや、ここは俺がやらねばならん」
結果は明らかで、俺が汚名を着るしかなかった。
ジーガン卿では、抵抗する皇族や有力貴族を抑えることが難しい。
何より抵抗勢力に、いや、皇国民全員に本当の危機だと思わせられない。
私が皇位を捨てる覚悟を見せてこそ、事の重大性がようやく認識できる。
人間とはとても身勝手て、眼の前にある動かし難い現実すら、自分の都合のいいように捻じ曲げて解釈する生き物なのだ。
「はっ、殿下の国を想い民を想うお心、感服いたします」
ジーガン卿だけでなく、周り居る騎士全員が最敬礼してくれる。
皇太子として当たり前の決断をしただけだが、それがこれほど称賛されること自体が、皇国が堕落していた証拠だろう。
皇族と有力貴族の多くが、国や民のために働いていなかった、少なくとも、今私が示したような、滅私奉公の心では政治を行ってこなかったのだろう。
「うむ、私の名で公開拷問を開始してくれ」
私が占領を命じたダイザー王国の王都広場で、ダイザー王家に王族と重臣、ニルラル公爵家の一族一門と重臣を公開拷問する。
最初に鞭を百回打たれ、背中の皮膚が破れ肉が裂け骨が剥き出しになる。
その背中に塩をすりこむのは、王都の民の希望者だ。
多くの王都の民が、王族や重臣に恨みを持っていたので、希望者が多かった。
一日ではとても終わらない数だったので、治療をしては毎日何度も塩を塗るのを繰り返す、永劫の拷問だと思えばいい。
「いいか、この者達は神を教えを守らず聖女様を大魔境に捨てて殺そうとした。
そもそも、神に対する敬いを持たず、背神行為を繰り返していた。
よってここで背神行為に相応し罰をあたえるのだ。
だがこれはダイザー王家にだけ与えるものではない。
ミルバル皇室もミルバル皇国民も、背神行為には同じ罰を与える。
今から軍の半分を皇国に向かわせるから、自分達だけが不当に厳しい戒律を課せられるとは思わないように」
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