第21話:楽園・カチュア視点

 私達の世界は、毎日変わっていきます。

 神の話では、平和な楽園を創るのだそうです。

 今までは食べる物は全て金猫ちゃんが集めて来てくれました。

 でも今では、私達のお庭が広くなり、果樹園ができたのです。

 私が働けるのなら、畑というものを創るのでしょうが、フェアも金猫ちゃんも神も働く必要はないと言うので、フェアリー達が集められる果樹園になりました。


「フェア様、花の蜜を集めてまいりました」


 フェアリー達が今日の花から蜜を集めてきて、フェアに報告しています。

 哀しい事ですが、私には話しかけてくれません。

 フェアは慣れたら話すようになると言ってくれていますが、信じられません。

 全員が私の事を怖がっていて、怯えるような視線を向けています。

 半数くらいは憎しみの視線、と思われる感情がうかがえます。

 その事を口にしてしまったら、神がフェアリー達に何かしてしまいそうです。

 まあ、神に隠し事などできないから、もう気がついているでしょうが……


「コッコッコッ、コケッコッコー」


 鶏という名の鳥が庭の草原を駆けまわっています。

 少々可哀想ですが、卵を取らせてもらって、それを食べるのです

 年をとったら卵を産む親鶏も食べるのだそうです。

 今から怖いのですが、人は、いえ、生き物は他の命を食べて生きていくそうです。

 今までのように、金猫ちゃんにだけ生き物を殺すのを任せてはいけないと、フェアも神の言うのです。


「モッオオオオオオ」


 牛という名の大きな動物も草原にいます。

 暴れると危険なのだそうですが、金猫ちゃんの言う事はよく聞きます。

 子供に与える乳を私やフェアリー達に分けてくれる優しい生き物です。

 牛の乳はとても美味しくて、私はそのまま温めて飲むのが大好きです。

 フェアリー達は花の蜜を加えて甘くして飲むのが好きなのですが、それぞれ好きな花の蜜があるようで、毎日何を加えるのかで喧嘩しています。


「プリンセス・カチュア、魚を釣ってきたら?」


 フェアが私に魚を獲るように勧めてくれます。

 フェアリー達が沢山住むようになって、食事の内容から魚が減りました。

 フェアは私にあわせて魚も食べていましたが、本来フェアリー達は果物や蜜の方が好きで、自分から好んで魚を食べる事はないようです。

 だから最近の食事は、果物と蜜がほとんどになっています。

 フェアは私が魚好きなのを知っていて勧めてくれるのです。


「ええ、ありがとう、だったら今から行くわね」


「心配しなくても私も一緒に行くわよ」


 フェアが一緒に来てくれるので、安心できました。

 ここは一人でも安全な場所だと頭では分かっているのですが、私の側には常にフェアがいてくれたので、いなくなると恐怖を感じてしまうのです。

 池の魚の中には、跳んでフェアリーを食べる恐ろしい奴もいるそうなので、フェアリー達は池に近づかないのです。

 

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