第20話:家族・カチュア視点
神と私が話した日から、私とフェアリーと金猫ちゃんしかいなかった世界が、一気に広がりました。
私達が住んでいる大きな木でできたお家から、円形で百歩ほどが私とフェアリーの全てでしたが、それが、丸く千歩ほどの世界になりました。
今までは、お家と小さな泉と草原だけだった世界が、お家を中心に森に入れるようになり、池や小川まで私達の世界になりました。
変わったのはお家やお庭だけではありません。
毎日一人二人と家族が増えていったのです。
私が人間の事を怖がって入りからでしょうか、それとも他に何か理由があるのでしょうか、増えた家族は人間ではなくフェアリーの同族でした。
そこで初めて知ったのですが、フェアリーとは人間がつけた彼らの種族名だというので、フェアリーちゃんにはちゃんとした名前がないというのです。
「ごめんね、フェアリーちゃん、ずっと名前がなかったんだね。
直ぐにちゃんとした名前をつけたいのだけれど、ずっとフェアリーちゃんと読んでいたから、全く違う名前は嫌なの。
申し訳ないのだけれど、フェアという名前でいいかな?」
「それでいいわ、カチュア。
私も今更ぜんぜん違う名前で呼ばれても、自分の事だとは思えないもの。
フェアなら今までとほとんど同じだから、呼ばれても気がつかないなんて事はないでしょうからね」
両手を腰に当てたフェアちゃんが、私のつけた名前をを認めてくれました。
八枚の羽根で器用に滞空しながらの仕草が、妙に可愛らしいです。
金猫ちゃんと二人で私の親代わりをしてくれたフェア。
今では友達のようなお姉さんのような感じでしょうか。
でも、新しい家族が増えて、ちょっと寂しくなってしまいました。
「もう大丈夫よ、ここは安全な所だからね、心配いらないわ。
ここにいる人間は、とても優しい私のプリンセスだけだから、貴女を傷つける人間はいないからね」
神が毎日ここに連れてくるフェアリーは、人間に捕まって虐待されている子達ばかりで、羽をむしられて飛べなくなった子や、眼を潰されてしまった子、手足をもがれてしまった子までいました。
だから、みんな、私を見てとても怯えるのです。
それが私にはとても哀しくて、つい涙を流してしまいました。
そんな私とフェアリーの間で、フェアちゃんは忙しく飛び回っていました。
ああ、でも、もう今はフェアリー達のケガは完璧に治っています。
むしられた羽も、潰された眼も、もがれた手足も、全部金猫ちゃんが治癒魔法で元通り再生してくれたのです。
だから、金猫ちゃんはフェアリー達にとても慕われています。
私は家族の長で、フェアちゃんと金猫ちゃんはプリンセスと呼んでくれますが、フェアリー達に怯えた目で見られてとても哀しいです。
神は何故こんな事をしたのでしょう?
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