第15話:ご機嫌・カチュア視点

 今日の金猫ちゃんは特に楽しそうです。

 別に不機嫌な日があると言っているわけではありません。

 何時私と遊んでいても楽しそうにしてくれているのですが、その楽しそうな態度が、今日は特に目を引くだけです。

 私はそんな金猫ちゃんを見ていると、自分までワクワクと愉しくなるのですが、フェアリーは違うようで、とても不審な眼で金猫ちゃんを見ています。


「金猫、あんたなんか悪巧みしているでしょう?

 さっき魚を獲りに行っていたけど、その時に他の事もやったわね!?」


 フェアリーが金猫ちゃんに詰め寄って怒っています。

 金猫ちゃんが私とフェアリーに内緒で何かやったのでしょうか?

 もし本当にそうだとしたら、少し寂しくなります。

 ここには私とフェアリーと金猫ちゃんしかいないのです。

 内緒にされると哀しくなってしまいます。


「うみゃああああああ!」


「まあ!」


 少しびっくりして声をあげてしまいました。

 金猫ちゃんは誇り高い性格のようで、普段はベタベタとひっついたりはしません。

 なのに、急に近づいてきて身体を摺り寄せてくれました。

 フワフワモコモコした毛並みは、とても柔らかく肌触りがいいのです。

 私より大きな体に包まれると、とてもいい香りがして、幸せな気分になります。


「お、こら、ひっつくんじゃない、カチュアを独り占めするな、こら!」


 フェアリーがカンカンに怒って文句を言っています。

 私を巡って取り合いが起こるなんて、フェアリーが教えてくれたお話のお姫様になった気分です。

 私は公爵令嬢で、お姫様でもあるとフェアリーが言いますが、公爵令嬢というのもお姫様というのも、全然実感がありません。

 でも、こんなに幸せを感じられるのがお姫様なら、私は確かにお姫様です。

 お話のお姫様も、二人の王子にきゅうこんされて、同じように幸せをかんじたのでしょうか?


「うみゃああああああ!」


「あああああ、狡い狡い狡い、狡いぞ金猫!

 カチュアの復讐をする時は、私にもやらしてくれると言ってたじゃないか。

 それじゃあ約束違反だぞ、こら!」


 金猫ちゃんとフェアリーが話をしていますが、私には意味が分かりません。

 いえ、全然分からない訳ではないのですが、ふわっとしか分かりません。

 こんな時、私は自分が人間であることが哀しくなります。

 金猫ちゃんと同じだったら、この護られた場所から出ても平気なのに。

 金猫ちゃんと一緒に、大魔境という所を思いっきり駆けまわれたのに。


 金猫ちゃんと同じでなくても、フェアリーと同じだったら、三人で仲良くお話ができたのに、今はフェアリーが教えてくれないと、金猫ちゃんの言葉が分かりません。

 そん風に思ってしまうと、哀しくて涙がポロポロと零れ落ちてしまいました。

 

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