第13話:脱出・皇太子視点
私が大神との会話を終えて意識を覚醒させたとき、周りの騎士達がキョロキョロと周囲を見渡していた。
思わず吹き出しそうになったが、私も同じようにしているのだろう。
ここで鍛え上げられた一騎当千の騎士の中でも、胆力に多少の差が現れる。
俺と同じように豪快に笑い飛ばす人間と、膝から力が抜けてその場に崩れ落ちる人間と、茫然自失に陥る人間など、色々な人間がいる。
「殿下、少し休息してから急いでここを抜けましょう」
ようやく笑いが止まった私に、プランケ伯爵ジーガン卿が話しかけてきた。
彼は芯から真面目な性格のようで、表情一つ変えていない。
彼の考えも分からないではないが、あれほど消耗していたのだから、大神を信じて眠らないと、大魔境を出て果たさなければいけない試練に支障が出るだろう。
いや、この程度の事は、ジーガン卿なら分かっているはずの事だ。
それなのに睡眠もとらずに大魔境を出ろという事は……
「お分かりいただけましたか、我々は全く消耗しておりません。
大神からのお言葉を頂き、安心したのですから、騎士の中にはその場に倒れて寝てしまう者がいてもおかしくないのに、そのような様子はありません」
ジーガン卿の言う通りだった、私自身まったく眠くないし疲れも感じていない。
それこそ大魔境の挑む前のように、気力も体力も充実している。
今から万の軍勢と戦えと言われても、全く問題なく戦えるだろう。
大神のお力はどれほど強いのだろうか、また心底畏怖を感じてしまった。
だが、まあ、なんだ、相手は神の中でも力ある方なのだから、当然ともいえるな。
「分かった、皆に装備の確認をさせて、大魔境をでようではないか」
「はい」
ジーガン卿が大声を出して皆に気合を入れている。
大神との対話は、人間には心の負担が大きすぎたのかもしれないな。
私も含めて、聖女以外が、神と対話できるなどと考えもしていなかった。
神通力で体力と気力は回復してもらえたが、心に受けた衝撃までは回復させられないのだろうな。
「いいかお前達、よく思い出すんだぞ。
我らは大神に選ばれ、特別な試練を受けるのだ。
我らがその試練に失敗すれば、皇国は滅び、皇国民は皆死んでしまうのだ。
気を引き締め、命を賭けて断じて行うのだ!
だが、例え大神からの試練であろうと、気負い過ぎることもない。
お前達は常日頃から、皇国を護るために命を賭けて戦ってきたのだ。
半数は戦いとは少々毛色の違う試練を達成しなければいけないが、お前達ならやり遂げてくれると信じているぞ」
「「「「「おおおおおお」」」」」
ジーガン卿の言う通り、大神からの試練は二つあった。
一つは皇国に帰って堕落した皇国民を心を入れ替えるという大役。
もう一つはダイザー王国に残っての戦い。
私はどちらの試練を受けるべきなのだろうか?
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