第11話:請願・皇太子視点
(畏れ多きことではありますが、皇国の聖女の居場所をお教えいただけませんか)
私は天罰が下るかもしれないと思いながら、神に聞いてみた。
どうせ皇国の聖女が見つからなければ皇国は滅ぶのだ。
民を死滅させておめおめと自分だけ生き延びる事などできない。
当然自害しなければいけなくなるのだから、ここで天罰が下って死んでも大した違いはない、そう腹を括って一歩踏み出して聞くことができた。
(皇国の聖女はいない、皇国民の堕落が激しく、あの国を守護している神が見放したため、皇国民に神通力を与えなかった。
いや、はっきり言えば、選べるだけのモノがいなかった、そういう事だ。
しかもあ奴は、自分が聖女を選ばなかったくせに、我の大切な真聖女の居場所をお前達に教えやがった、糞だ!
ギタギタの半殺しにして、身体をバラバラにしてやったから、千年は復活しない)
私は、ハンマーで頭をぶっ叩かれたように感じた。
私は聖女が見つからない事を知って、最初に自分や皇国民ではなく神を疑ってしまった、正真正銘の愚か者だ、いや、不神心者だ。
皇太子の俺ですらそうなのだから、多くの皇国民が神を敬虔に敬わず、利用して利益を得るモノだと考えているのかもしれない。
それでは聖女が選ばれなくて当然だ!
しかしそれ以上に驚いたのは、この神が我らの守護神を半殺しにした事だ。
嘘をついているような気配は全くないし、つく必要も意味もない。
おそらく神々の中でも突出した実力者なのだろう。
だがそうなると、守護神が千年も不在となれば、心を改め謝る事もできない。
ここはどれほど卑屈と思われようとも、この神にすがるしかない!
(大神よ、どうか私の願いをお聞き届けください)
(なにが言いたいのか分かっているが、神に願うのなら真摯に祈れ!)
(は、大神のお力を持って、皇国の民に聖女を賜りたく願い奉ります!)
私は必死だった!
(皇国の民、属国属領を全て合わせれば、三億を超える民がいます。
皇国が滅びたら、本国の民が餓死するだけではすまないのです。
人の住めなくなった本国から属国属領に、食糧を求めた民が殺到します。
それでは食糧を奪いあって凄惨な殺し合い、内乱が勃発してしまいます。
皇国が揺らげば、大陸全土で大戦争が引き起こされ、未曾有の人類殺し合いがはじまってしまい、人類が築き上げた文化文明が滅んでしまいます。
どうかそのような事が引き起こされないように、聖女を皇国に賜りたく、請い願い奉ります!)
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