第24話 悪友

毎日、仕事に追われ、忙しいままに月日が過ぎ、気が付いたら22になっていた。


映像制作のほかにも、仕様書の内容チェックや、見積もり書等々、書類関係に関わることは、こちらで作らなければならず、忙しくて当然と言えば当然なんだけど、『せめてもう一人いれば…』と言う気持ちが生まれてきていた。


親父にその事を伝えると、親父は「そっちで何とかしてくれ」と言うばかり。


勝手な行動は出来ないと思って、相談したんだけど、「そっちで何とかしてくれ」としか言われない状態だった。


けど、あくまでも親父の会社に雇われている身だし、耳に入れないといけないと思い、何かあるたびに連絡をしていた。



相変わらず、雪絵とはメールがメインで、会うのは2,3か月に1度。


向こうも忙しいようで、メールの頻度は減っていた。


けど、週末になると映画やドライブと言った誘いがあったけど、どうしてもシラフで会うことが出来ず、その度に断り続けていた。



そんなある日の事。


久しぶりにケイスケからメールがあり【飲みに行こう】と誘いを受けた。


ユウゴと待ち合わせ場所の飲み屋に行くと、久しぶりに会ったケイスケはかなりやつれていて、疲れ果てている様子だった。


「仕事、忙しいんか?」


「うーん… 前に社長がワンマンだって言ったじゃん? 最近更に酷くなって、赤字を黒字に変えろとか、意味わかんない事言い始めちゃってさぁ… 経理部長が辞めたんだけど、俺に当たってくるようになっちゃったんだよねぇ。 会社自体が危ういし、俺も転職しようかなぁ…」


ケイスケはため息ばかりをつき続け、思わず切り出してしまった。


「うち来るか?」


「俺、経理以外できないよ?」


「見積作ったりできるだろ? 事務全般をやってもらえるだけでかなり助かるんだけどどうだろ?」


「え? マジで? いいの?」


「正直、給料は今より減ると思うけど、それでも良ければ受け入れるよ」


ケイスケはパァっと明るい顔をした後、「転職する! そっち行く!」と言い、退職し次第、うちの会社に来ることが決まった。


その場で親父に電話をし、ケイスケの事を告げると、親父は「わかった。 経理もそっちで出来るか? こっちも今月いっぱいで一人抜けるから、そっちまで手が回らないんだ。 頼むな」と言っていた。


ケイスケにその事を言うと「任せろ!」と自信満々。


するとユウゴが「結局、3人揃っちまったな」と嬉しそうな表情をして、飲み物を飲んでいた。


「悪友っつーか、腐れ縁って感じだよな」と呟くように言うと、ケイスケが切り出してきた。


「つーか大地、彼女出来たって噂聞いたんだけどさぁ」


「ああ。 出来たよ」


「腕組んで歩いたりできんの?」


「シラフじゃ無理」


「マジか… 電車とかもしんどかったりする?」


「時と場合によるかなぁ。 あの女こっち見てるって思うとダメ」


「ふーん。 意識の問題かぁ… そんなんでよく付き合えるな?」


「奇跡だな」


そう言いながら笑い合い、悪友との飲み会を楽しんでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る