第254話

【まえがき】

昨日の投稿で計三百話目となりました。

一話を短めの約二千文字で縛っているので大した量ではありませんが、読んでくださる皆様がいるから続けることができました。

ありがとうございました。

引き続きご愛読いただけますよう、更新を続けますのでよろしくお願いします。


【本文】


 クッパと冷麺で夕食を〆た俺達は、コンビニへ寄ってアイスや菓子類、ジュースや牛乳などを買って帰った。

 他にいま必要としているものがないし、家にいろいろとモノが増えるのも困る。ミミルも何かが欲しいと思えるほどに地球のこと、日本のことをまだ知らないので駄々を捏ねることがないので安心だ。


 一階はまだ食器類が片付いて無くて雑然としているが、一度片付けてまた取り出して洗い、拭き上げて食器棚などに移す……などという手間を考えると、今日はこのままでいいだろう。

 風呂の準備を済ませ、ミミルと共に二階に上がる。


「ミミル、今日買ったものをここに並べてくれるかい?」

「……ん、どうする?」

「ミミルが文字を書く練習をするにも準備が必要だからね」

「ふむ……」


 二人で買ってきたものをミミルがローテーブルの上に並べる。

 箸に茶碗、味噌汁椀、豆皿のセットに十八センチサイズのココット。そのあと買ったケーキに、方眼罫のノート、シャーペン、替芯、消しゴム、色鉛筆。ミミルの学習以外の用途で使うかと思って買ったカラーマーカーのセット、ステープラー、ハサミ等々の文房具一式。最後に平仮名、片仮名、学年別の漢字ドリル……。


 今日もたくさん買い物をしてしまった。


 独り反省しつつ、シャーペンの芯を一番柔らかいものと交換し、ミミルに手渡す。


「芯がなくなったら、この容器に入っているので数本取り出し、蓋と消しゴムを抜いて中に入れる。いいかな?」

「……ん、わかる。この消しゴム、消えにくい。そっち、使う」


 目の前にあった消しゴムの包装を剥がしてミミルの前に置く。


「すぐに風呂が沸くけど、先に入るか?」

「ん、はいる」

「じゃあ、このあたりの勉強道具は準備しておくから入ってきていいぞ」

「……ん」


 ミミルが立ち上がり、一階に向かって歩き出した。下着や着替えも全部空間収納にミミルは仕舞っているから危うく気づかないところだったが、そろそろ洗濯しておかないといけないだろう。


「あ、ミミル」

「……?」

「洗濯するものがあったら、洗濯機の中に入れておいてくれ」

「うん、わかった」


 基本的にミミルに買った下着は子ども用だから他の服と一緒に乾燥機に掛けても大丈夫だろう。ダンジョン内で着る服は自分で乾かすだろう。

 ミミルが風呂に入っている間に洗濯機を回して、俺が風呂から上がるくらいで洗濯も終わるだろうし、それまでは懸案事項の整理だ。


 先ずは、裏田君に対してミミルをどう紹介するかということ。

 俺の身に万が一のことがあった場合、裏田君に後を任せることができるかで変わる。

 もし、この店を引き継いでくれるというならこの店は既に法人化しているので、役員になってもらうのがいいと思う。まあ、そのへんは税理士さんとも相談かな。そして、ダンジョンの存在とミミルのことを正直に話す方がいいだろう。


 一方、彼があくまでも自分で店を持つことに拘るなら、ダンジョンとミミルのことを詳しく話すのは諦めざるを得ない。でも、ダンジョンのことは話さなければ済むが、同居人であるミミルのことは話さざるを得ない。となると、ミミルが俺にとってどういう関係なのかという話になってしまう。


 自分から「伴侶になってほしい」と言ったわけだから、これからずっとミミルと暮らすことは間違いない。だから、「ミミルは知人の子で預かっている」という返事はできない。


 俺が歳と経験を重ねたせいで、青臭い恋をしていた頃のようなドキドキした感覚を失っているからかも知れないが……俺から見たミミルは娘のような存在だ。

 あの夢第119話が余計にそうさせてしまったのかも知れないが、庇護欲こそ湧き上がりはすれ、恋愛感情のようなものは俺の中に芽生えていないし、これからも芽生えないだろう。


 だから、何らかの理由で「養女にした」ことにして、俺の娘として扱うのが最も良い選択だ。

 問題はそれをミミルが受け入れてくれるかどうかだが……俺には他にいい選択肢が思い浮かばない。


「これはあとでミミルに相談だなあ……」


 両手を頭の後ろで組んで、そのままソファーにもたれ掛かる。


 裏田君、田中君、パートやバイトの人たちに紹介するときにされる質問を考えると、明らかに先にミミルと口裏を合わせておかないといけないことが多い。

 先ずは年齢。そこから繋がってどこの学校に通っているか、友達はいるかという質問が出るだろう。ミミルは可愛いから学校に好きな子はいるのか……なんて質問も出るかも知れない。もちろん、「いない」と答えさせれば済むことだ。

 決して親バカで言わせるわけではない。実際には学校には通っていないのだから、他に答えようがないだけだ。


 たぶん、次にくる質問は出身地だ……これは困った。なにか設定を考えてやらないといけない。

 ミミルの耳のこともいずれはバレるだろうし、ルーン文字を使うことなどを考えると、北欧あたりの出身ということにしておくと良いかも知れない。

 どうやら北欧の言葉や地理も調べて置く必要がありそうだ。



【あとがき】

まだ店は開店していませんが……本格的な店の準備に入ると夜だけの活動になるので話の展開が早くなる予定です。

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