第222話
ネット検索をした結果、やはりMKS単位系の説明をするのが最も教えやすいような気がしてきた。
そのためには、MKSの三つから最初に説明する必要がある。
〈チキュウには長さの単位、
〈ほう、シツリョウとは何だ?〉
〈正確に言うと違うんだが、重さのようなものだな。一旦、重さだと思っていてくれ〉
〈わ、わかった〉
わかりやすく言うと、天秤で量るのが質量、バネ秤等で量るのが重量だ。
天秤で量ると結果は地球上のどこでも同じになるが、バネ秤などで量る器具では誤差が生じる。地球の自転で生じる遠心力があるからだ。また、標高が上がれば重力が下がるので、重量も下がってしまう。
地球で暮らす上で必要な知識として、単位はしっかり理解して欲しい。しかし、質量と重量の説明をするのに遠心力だとか引力の説明をしないといけないというのは、それこそ荷が重い。
だから、一時的に質量とは重さのことだと認識してもらうことにした。
〈長さは縦横を乗じることで、広さを表す数字になる。これをメンセキという。基本単位はヘイホウメートルだ〉
〈ふむ、エルムヘイムにはない考え方だな〉
面積くらいはあって当然だろうと思ったが、エルムヘイム共通言語に該当する単語が思い浮かばない。
記憶が曖昧だが、日本でも平城京時代には町割りに必要だから度量衡を採用していたはずだがどうなっているんだろう。
〈畑があるならメンセキは必要だろう。エルムヘイムに畑はないのか?〉
〈昔はあったのかも知れんが、ダンジョンから食べ物を得る以上、畑など趣味でしかない。もちろん、メンセキという概念もないな〉
〈そ、そうか……〉
やはりダンジョンというのはいろんなところで発展を阻害してしまっているらしい。
一瞬返事に困ってしまうが、ミミルが気にしていないようなので先に進めることにした。
〈そのメンセキに高さを乗ずると
〈そういう単位もあるのだな。確かに数字にできるとわかりやすそうだ〉
まあ、面積がなければ体積を計算することもないんだろう。
肉を煮るにも、何リットルの水に何グラムの塩……といった分量も計算していなさそうだ。
ミミルがエルムヘイムの料理は大雑把だといった理由もよくわかる気がする。
そういえば、一キロは一リットルの水だよな……。
〈タイセキの話まできたら、次は重さの話になる。ところで、エルムヘイムでは飲み水の量を量るのはどうしてる?〉
〈量ったりしないぞ。そのまま魔法で出して飲む〉
〈そ、そうか……〉
これでは話が進まない。
〈喉を潤すための水の量を量るのに、一リッポウメートルという単位は大きすぎるだろう?〉
〈そうだな、杯に入れて数えたりするのか?〉
〈決まった量の水が入る杯を使うんだが……それは別として、千メートルはキロメートルという単位に変わる。逆に千分の一はミリメートルだ。そして、百万リッポウミリメートルの水の重さを基本とし、一キログラムに定めている〉
〈キログラム……〉
〈千分の一キログラムはグラム、千キログラムはトンという単位に変わる〉
ミミルは一瞬だけ目を宙に泳がせると、俺に訊ねる。
〈ということは、千グラムが一キログラム、千キログラムが一トンだな?〉
〈そのとおりだ。さすがミミルだな〉
ミミルは薄い胸を張ってドヤ顔をこちらに向ける。
別にすごいとは思わないが、飲み込みの良さは称賛に値するだろう。
〈キロというのは千を意味していて、ミリというのは千分の一を意味している。他にセンチというのがあって、これは百分の一を示すんだ。つまり、一メートルは百センチメートルということになる〉
〈ふむ、センチは百分の一……〉
急いで覚えるためか、ミミルは俺の言ったことを復唱している。
これくらいで直ぐに覚えてしまうのだから大したものだ。
〈千リッポウセンチメートルの液体の場合は、リットルという表現をする〉
〈つまり、一キログラムは一リットルだな〉
〈そのとおりだ〉
これで長さと重さまで説明することができた。
次は時間の単位の説明だ。
〈しょーへい、一メートルは何を元にして決めたのか、まだ教えてもらってないぞ〉
〈あ、すまんすまん……〉
もう一度、ネットで「メートル」を検索してみる。
すぐに結果が表示されるのだが、やはりそこには〝一メートルは、光が真空の中を二九九七九二四五八分の一秒間に進む距離〟という文字が書かれている。
「確かメートル基準器ってあった気がするんだよな……」
呟きながらまた検索を掛けると、「メートル原器」という記述を見つけた。
もちろん中身を開いてみる。
〝北極と赤道間の距離を一千万分の一にした長さ〟
当時実測したようなことが書かれているが、精度が問題となって光が一秒間に進む距離に変更されたそうだ。
でも、これならなんとか説明できそうだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます