第十一章 ゴールドホーン
第101話
魔力で作ったチャクラムのようなものを使って二頭のキュリクスを倒すと、ドロップアイテムに骨のない肉が出た。
何やら「不公平だ!」等と怒りを爆発させそうなミミルを
数歩先でミミルがまた雷魔法を使ってキュリクスをまとめて倒している。
大量に殲滅され、落雷しなかったキュリクスは慌てて逃げ出すのだが、俺が魔法の練習をするにもキュリクスを探して移動せざるを得なくなるのだが、ミミルはそのことに気がついているのだろうか……。
ミミルの魔法で黒焦げになって霧散したキュリクスが残した魔石を、二人でのんびりと拾いながら歩く。生き残ったキュリクスが逃げてしまうと俺の練習効率が下がるのだが、魔物が逃げずに残っていれば、こうして気楽にドロップ品を拾って歩けない。痛し痒しというやつである。
十数分かけて魔石を含むドロップ品を拾い終える。俺が拾った魔石が九個、ミミルが拾った魔石が十二個なので合計二十一頭のキュリクスに雷を落としたことになる。
一回目は二十三頭だった。外れるものもあることを考慮して八割程度の命中率だとすると二十五本ほどの雷柱を発動できているということになる。魔物の集団に対して八割の命中率ならかなり勢力を削ぐことができるので楽になるだろう。
問題は……
〈また肉がないではないかっ!〉
ミミルが不機嫌になるところだろう。
だが、雷は非常に高温になるらしい。
自然現象の落雷では瞬間的に一万℃を超えるというのだから、ミミルの雷も高温になるのも予想がつく。黒焦げになるのも仕方がない。
結果的に、雷で黒焦げになるせいで肉がドロップしないような気がする。
〈ミミル、恐らく……〉
声をかけると、ミミルはふわりと髪を
〈恐らく――なんだ?〉
〈恐らく、落雷で黒焦げになるから肉が出ないんじゃないかと思うんだが……〉
〈い、いや……そんなことは……〉
ミミルは反論しようとしたところで俺の顔を見ると、次の言葉が出てこなくなった。さっき俺が風刃で倒した二頭のキュリクスは肉をドロップしたことを思い出したのだろう。
〈た、試してみることにしよう〉
〈いや、もう周囲には一頭もいないから〉
〈探しに行くぞ、ついてこい〉
闇雲に歩き回ってもキュリクスが見つかるかわからないが、ミミルは「こちらにいるはずだ」と確信に満ちた顔で自分が進む方向に指をさして歩いていく。
だんだん祭壇から遠くなっていく気がするが、別に祭壇周辺でないと狩りができない――などということはない。
ただ、朝焼けを見て〝雨が降るやもしれん〟と言っていたのはミミルだ。傘など当然持ち歩いていないので、もし降ってきて濡れたりすると……まぁ、地上に戻って風呂に入ればいいか。
自己解決した俺は、ミミルの後を追うようにして駆け出す。
生い茂る草の高さは一五〇センチ程度あって、ミミルの身長よりも高い。ミミルは草を掻き分けるようにして進んでいるが、ほとんど周辺が見えていないだろう。恐らく、探知魔法のようなものを使って歩いているはずだ。
俺の超音波で探知できるのは半径五〇メートル程度だが、ミミルの探知魔法はどのくらいの距離まで探知できるんだろう……。
ミミルが歩いた跡をトレースするようについて歩き、時折停止して音波探知を使う。音波探知のメリットは自分を中心に全方位に向けた探知ができることだが、他にあるのか?
〈しょーへい、このあたりにいるか?〉
〈いや、いないぞ。探知しながら歩いているんじゃないのか?〉
〈私の探知は少し時間がかかるからな。しょーへいの探知の方が早いのだ〉
〈ほう……〉
魔力探知の方法は知らないからわからんが、音波探知の方が探知速度が速いということなんだな。
音の速度は毎秒約三四〇メートル。
周辺の魔物に音波が届いて返ってくるまでの時間を考えると、半径五〇メートルであれば脳内で処理する時間を含めても一秒以内にできる。魔力探知はそれ以上――ということか。
〈そういえば、魔力視というのを教えてくれるんだよな?〉
〈魔力視は基礎的な技能だからな、覚えておくといい。方法は……〉
ミミルが立ち止まってこちらを見る。
〈魔力を見ることができる薄い膜を通して見る――私はそう想像している。想像して魔力をそこに流すだけだから名前などつけていない〉
――魔法とは想像し、創造するもの
魔法を使うのなら忘れてはいけない大事なことだ。
特に「魔力視」は基本技能であり、とてもシンプルな魔法なので名前もいらないだろう。
心を落ち着かせ、ミミルの言うとおり魔力を見ることができる薄い膜……フィルターのようなものをかけるイメージをつくる。
次に魔力の流し方だ……一瞬だけではなく、継続的に魔力の流れが見えるようにしたいので、蛇口を開いたままにするようなイメージで魔力を流し込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます