85 大丈夫、私に任せて
睨む先の木の影から着物を着た男性が姿を見せた。
「これは凄い。"NINJA"の次は"SAMURAI "の登場?」
「此処より先へは通さん。童子を引き渡せ」
「何それ?まるで子供を
ミシェルは喋りながら背中に刺さっていたクナイを抜いて相手の心臓に目掛けて投げた。ミシェルの投げる動作を見て、彼は半歩引き刀を抜いて飛んできたクナイを弾き飛ばした。
その動きに驚いたのはミシェルだった。
無駄のない滑らかな動作と
「わぁあ!居合い切りってやつ?はじめて見たわ!」
「
「へぇ、それは怖い」
ミシェルは左の肩に刺さっていたクナイも抜いた。背後から追ってきてた者の気配を探ったが、完全に姿を隠している。
どうやら、ここまで自分達を追い込むのが役目だったようで、後ろから襲われる心配は無さそうだった。
ミシェルは亘の手を放した。
不安げに自分を呼ぶ亘を振り返り満面の笑みを浮かべる。
「大丈夫、私に任せて」
ミシェルは相手にゆっくり近付き間合いをはかる。自分に挑むつもりのミシェルを見て彼は刀を構える。
「私と戦うつもりか。体が引き裂かれるだけでは済まなくなるぞ」
「はっ!私が刃物をちらつかせればびびると思ったの?残念、返って燃えてくる」
正直、刀との戦闘なんて畑違いを通り越して未知の領域。だが、侍との戦いに"ない"血が
踏み込んできた彼は左側から刀を振る。ミシェルはそれをクナイで受け止めた。耳をつんざくような異音が響き
ミシェルは受け止めた位置をずらしてそのまま相手に刃を向ける。彼は軌道を読んでクナイをかわし、体勢を変えて刀を振り抜いた。ミシェルもギリギリでかわし仰け反った体勢から後ろに一回転する。
その後も、刀をクナイで弾き互いに斬り込む瞬間を探っている。リーチのある刀のほうがこの場においては有利なのだが、なかなかミシェルの肉体に届かない。相手の力量が劣っている訳ではなく、ミシェルの
息もつけぬほど緊迫した死闘が続いていたので、ミシェルは一旦距離を取った。
「てゆーかー、長物と短刀じゃ勝負になんなくなーい?フェアじゃないよね、この勝負」
ミシェルはクナイの持ち手に付いている輪っかに指を通してくるくる回す。茶化した態度で
「同種なのにお喋りは嫌い?」
なおもクナイを回し続けるミシェル。隙だらけのミシェルに彼は刀を構えて駆けてくる。彼が近付いてくるとミシェルはポケットに忍ばせておいたカッターの刃を投げ飛ばす。
彼は飛来物を捉えていたが、迷わず突っ切り
彼の突進に驚きミシェルは反応が遅れた。寸での所で刀を受け止めたが、押し負けて腕を切っ先が
獲物を捉える動体視力に加えて、致命傷を避ける判断力。おまけに痛みに対する耐性もある。
幾度と死線をくぐり抜けてきた者なのだろう。ちょっとの
だが、それも一筋縄にはいかないので、相手を
ミシェルは背後に急な傾斜があることに気付かず、足を滑らせ地を転がっていく。砂まみれで
目の中に入ってきた砂粒に彼は少し目を細めるが、ミシェルの姿を逃すことはなかった。彼はミシェルの
「ミシェルぅ!!」
ミシェルの体を両断した彼だったが、すぐに自分の失態に気付いた。振り抜いた刀身が途中で何かに食い込み止まってしまったのだった。
「ふふっ、私の体は引き裂けても、後ろの大木ごとは無理だったようね」
ミシェルはわざと自分の体を斬らせ刀を止めたのだった。
砂をかけたのも
相手は素早く刀を抜こうとしたが、ミシェルのほうが早くクナイで斬りかかる。致命傷を避けようと彼は喉元に手を
その一瞬の判断ミスが決定的となり、彼は両目を深く切り裂かれる。痛みで怯んだ隙に相手の体を蹴って刀から手を離させる。ミシェルは激痛で顔を歪ませながらも刀を体から抜く。
「へぇ、日本刀って結構重いのね」
刀の重量とその
「さて、どーする?得物は奪ったけど、まだ戦う?」
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