京都
75 旅行?
「ねぇ、亘!旅行にいかない?」
クルトンの入ったクラムチャウダーをスプーンで口に運びながら、亘は目の前の金髪の女性に視線を向ける。すでに夕食を完食していたミシェルは頬杖を付きながら亘の返事を待っていた。
「旅行?」
「そ!夏休みなんだからさ、どこか観光に行こうよ。亘も塾は後期取ってないんでしょ?」
今は8月4日。
8月の夏期講習も下旬分は受講しておらず、確かに暇な時間はできている。本当は宿題を済ませる為に空けたのだが。
「ん~別にいいけど」
「やったぁ!亘と旅行行くの初めてだよね。どこに行こうか?ハワイかグアムでのんびりするのもいいし、観光ならヴェネチアとかモナコもいいよね~」
全て海外の場所を挙げるミシェル。どれもテレビでしか見たこともない場所なので、どんな所か想像がつかない。
「なんで、全部海外なんだよ。俺パスポート持ってないし」
「申請すれば1週間でできるよ。私が一緒なら言葉の心配はいらないしね」
同種は今いる国の言葉を話し、どんな国の人とも会話が出来るのだった。
「うーん、いきなり海外はな~俺旅行自体行ったことないし」
「そうなの?」
「ああ、家族旅行なんて同然ないし、小学校の修学旅行はお金が払えなくて行ってない。中学の時の修学旅行は京都だったけど、風邪引いちゃって行けなかったから」
「そっかー、なら京都行こうか!新幹線で二時間だし、私も久々に行ってみたいし」
「そうだね。行こうか」
話し合って8月の第3週に2泊3日で京都に行くことになった。亘も初めての旅行を心待ちにしていたのだが、まさか赴いた京都であんな事態になるとは…
この時は想像もしていなかった。
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