100年生きた悪魔は少年に恋をする?

きくらげ

わたる

01 一緒にいるよ


 俺を愛してくれたのは100年生きている悪魔だった。




 病院の一室にベットの横で本を読む女性がいた。ようやく海外から入荷された新刊で本屋で購入し熟読じゅくどくしていた。


「ミシェル……」


 寂声さびごえで呼ばれ彼女は文字の海から目を離す。胸や腕に計測器や管をつけた老齢ろうれいの男性を見つめる。


「俺が死んだら、俺以外のやつと生きていけよ」


 そう言い微笑ほほえむ彼の顔をプラチナブロンドの髪を持つ女は悲しげに見つめた。


「あなたがそう言うのならそうするよ、でもね……」


 しわだらけで血管の浮き出た右手に彼女はそっと手を重ねる。スカイブルーよりも透き通った瞳が彼を見つめる。



わたるが死ぬまでは渉と一緒にいるよ」



 二人がどういう関係だったのかは知りえないが、見つめ合うその眼差まなざしにはあいを越えたものがあった。




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