はい、もしもし?
僕は最近、懐かしい喫茶店を見つけた。
名前は平仮名で「めろでぃ」という。
地元の高校に通っていた頃、
仲間たちと入り浸っていた喫茶店に作りがそっくりだった。
特に、階段の横に置かれている古くて黒い電話が懐かしい。
高校の頃はあのタイプの黒電話から、よく電話がかかってきたものだ。
「はい、もしもし?」
「あ、あたし。ねぇ?今なにしてるの?」
「別になにもしてないよ」
「ふーん。じゃあ、あたしもそっち行こうかな」
そんなたわいもない話をあの人としたものだ。
あの黒電話を見ると、
またあの人から電話がかかってくるような気がして、想像を膨らませてしまうのだ。
でも、この「めろでぃ」の黒電話は
一度も鳴ったのを僕は見たことがない。
そりゃあ、そうだ。
あの人がこの喫茶店を知るわけもないし、
かかってくるわけもないのだ。
「チリリリーン」
僕は振り返って黒電話を見る。
マスターが僕に
「お客さんに電話だよ」
「え?」
と僕が驚きながら、黒電話に向かう。
あの人ではないだろうと分かっていても、
少しだけ期待しながら。
「はい、もしもし?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます