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所長はいつも、日向ぼっこをしている柴犬のような顔で、穏やかに依頼人からの仕事をしている。
しかし、今日は少し違った。急な寒さで体調を崩した戸田さんからの依頼を終えた僕が事務所に帰ると、所長は珍しく忙しそうにしていた。
「ああ! お疲れ様! 丁度良かった! 今、新規の仕事が来て、これからちょっと出ることになった! もし時間までに俺帰ってこなくても、上がっちゃって。あ、そうだ、いつも言ってるけど……」
「はい、わかってますよ。戸締まりはしっかりと忘れ物はしないようにですよね? 」
「ははっ! さすが、わかってるね~じゃあそういうことでよろしく! 」
慌ただしそうにしながらも、所長の口角は上がりっぱなしでいかにも楽しみだというのがひしひしと伝わってきた。
結局その後は、夕方のショータローの散歩を終えた僕に、所長から戸田さんの体調を心配する電話が一本入っただけで、特に変わった仕事はこなかった。
時間になっても所長は帰ってこなかったから、僕は言われたとおりに先に上がらせてもらうことにし、帰路についた。
ここまではよかったのだ。
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