第14話

「セレブリティのマネージャーから、『一度訪ねて来るように』と、伝言を伝えられてます」


「そう、良かったわ。これで上位貴族家の人間と繋がりを持つ手段が出来たわ。ありがとうサンドラ」

「うまくいけばいいですわね? ミザリー様」


 こうしてミザリーはセレブリティの門をたたいた。

「マネージャーはいらっしゃるかしら」

「はい私ですが?」


「サンドラから紹介して頂いたコールマン男爵家のミザリーと申します」

「あー貴女がそうですか。うちのクラブは最高級を求めていますので、貴女だと相当に性格の良さを前面に押し出せないと厳しいと思いますが、それでもやって見たいと思われますか?」


「ちょっと? それはどういう事でしょうか?」

「あなたの容姿では、ここでははっきり言って大したことないって言う事ですね」


「えっ…… 貴方は貴族家の私に対してそんな事を言える程に偉いのですか?」

「全く、勘違いも甚だしいですね? ここで働く以上はお客様と従業員の区別は在っても、従業員の中に貴族や平民、亜人などと言った差別要素は一切存在しません。それが気になるようでしたら、どうぞお帰り下さい。それと……」


「それとなんですの?」

「私の父は一応辺境伯家の当主です。ここでは誰にも話した事は在りませんけどね。必要のない事ですから」


「……すいませんでした。あの採用はして頂けるんでしょうか?」

「一日…… 今日一日頑張ってみてください。お客様の評判を伺ってから判断させて頂きましょう。ただし失礼な行為とかを見かければ、途中でもお帰り頂く事になります。まぁその場合でも今日の研修費用はお支払いいたしますからご安心ください」


「解りました。頑張ります……」


 パウダールームに案内され、化粧を施され、髪形をセットして貰える。

 鏡の中に映し出された自分の姿を見て、思わず見とれてしまった。

「これが私……」

 凄い。

 まるで魔法のようだわ。


 しかし、その直後にミザリーは衝撃を受ける事になる。


 30名ほどのホステスが、同じようにパウダールームでメークを施され、ホールに集められミーティングが始まる。

 研修生の、紹介として他のホステス達の前に立ち挨拶をすると。

 他の人達が眩しすぎて、一瞬言葉に詰まってしまった。


 自分の見た目には自信があったし、その私が今日のメークを施された事で、間違いなく自分史上最高に綺麗だと思っていた。


 でも私の前に立ち並ぶ他のホステス達は更に美しく光り輝いてる……


 ホステス達の列の後ろに並ぶ兎人属のバニースーツを着用した女性達でさえ、抜群のスタイルで、メリハリのあるボディと長い手足、綺麗な白い耳が美しいと思わせた。


 カジノのディーラーである、猫人属の女性もハッと目を引くほどに美しく可憐だ。


 なんなの…… ここは……


 私の再婚相手を見つけるまでの間の我慢よ。

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