第12話

 街で偶然出会ったミザリーは、私と同じ年だからまだ18歳なのに、何処か疲れた感じがしてる。


 上位貴族家の娘ならまだしも、男爵家程度の娘であれば、ミザリーのような長女であっても、出戻りの娘に対しては風当たりが強いのであろう。


「それで、ミザリーは街を一人で歩いて何をしてるの?」

「私みたいな、良い女は今街で噂のスカウトに出会えば、逆転のチャンスがあると思って、毎日外に出てるのよ。家は居心地が悪いしね」


「そうなんだ。スカウトって何の?」

「高級会員制クラブ『セレブリティ』のスカウトだよ、そこで働けば上位貴族の男性とも知り合える機会が多いっていう噂だからね。実際に何件も結婚をした話を聞くしね」


「へぇそうなんだね。ミザリーはなんで離婚しちゃったの?」

「ディビットの家が借金だらけになって屋敷も取り上げられて、うちの実家にも取り立てが来たらしくて、父がきっぱりと縁を切る為に、呼び戻されたのよ。あーこんな事なら、あんたにそのまま押し付けとけば良かったよ」


「へぇでも私は貴方に感謝してるわよ?」

「なんでよ?」


「色仕掛け女にそそのかされて浮気する様な男と結婚なんかしたら、それこそ地獄だったじゃないの。ありがとうミザリー。後ね、貴方が言ってるその『セレブリティ』だっけ? そこ私の侍女だったサンドラが経営者の知りあいらしいから、紹介できるかもよ?」

「随分な言い様だね。あなた程度の女に言われたくないわ。でもサンドラの情報は助かるわ。その召使い女は何処に居るの? 私のような美しい女性が毎日歩いてても、声を掛けてこないなんて、スカウトって言う人間もきっと、見る目の無いカスの様な人種だろうけど」


「凄い自信だね?」

「私のテクニックにかかれば男なんて2人きりになった時点で、言いなりに出来るくらいの自信はあるわよ」


「そうなんだ、ディビットもそうやって落としたの?」

「そうだよ? あなた5年間も婚約しててキスもさせなかったんだってね。私がさせて上げたらすぐに夢中になったわよ。次に男と付き合えたら、ちゃんとさせて上げなきゃまた逃げられるよ?」


「ご忠告ありがとう。肝に銘じとくね。サンドラに連絡が取りたいんだったら、セブンスショップって言うドレスや貴金属の買取をしているお店を訊ねれば、会える筈だよ?」

「そう、明日にでも行って見るわ」


 なんだか楽しくなって来たよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る