第9話
次に的を絞ったのは、スティングレー家とアストラル家の女性達だ。
アゲハの幼い時に他界した実母の後釜に座った、ブクブクと肥えた白豚の様な義母と、義母にそっくりな下品な異母妹。
そしてアストラル家のディビットの母親。
この3人に対して、ホスクラの中でも最も優秀なキャストを、街で偶然を装い出会わせる。
最初は無料で招待して、ホスクラの楽しさを叩き込む。
正に王女様でもこんなに大事に扱われない! という程に持ち上げて、他の客からも羨ましがられる存在にしてしまうと、後はもう簡単だ。
とことんホストに貢がせて、両家の資産を食いつぶさせる。
その頃には、アゲハの会員制クラブの方でも、スティングレー家とアストラル家は奥方達のホスト狂いで、財政が傾いているので一切の手助けをしては駄目だ。
下手に情けを掛ければ、巻きこまれる。
そんな噂が、何処からともなく蔓延していた。
当然アゲハがネタ元で、ホステス達からの耳寄り情報と言う形で浸透させているのだが……
更に、その噂が出回る頃になってもこの二つの家の女性達には売掛を認めさせていた。
十分に売掛がたまり、一撃で屋敷を取り上げれる程の額になったタイミングで、アゲハが司法系の家系である侯爵家へと泣きつき、クラブの会員達の後ろ盾の助言もあり、両家の家屋敷は差し押さえの処分が決定された。
その段階になると、両家の夫人と娘は絶縁され、放り出される。
真実の愛を見つけた筈のディビットの嫁も実家へ呼び戻され、落ち目のアストラル家との関りを断つ様に言い渡され離縁に至る。
ホスクラの前で暴れる白豚母娘達の目撃情報があったが、すべては憲兵任せで、回収に足りない分の売掛金は、泣く泣く担当ホストと店が負担する事になってしまったと、これみよがしに噂を流すと、同情も誘い更に担当ホスト役を買って出たキャストは人気が上がった。
そして差し押さえられた実家はアゲハが買取り、今回協力してくれたホストの子にプレゼントした。
ディビットの家も同様だ。
ホストの男の子達はその家をアゲハとの愛の巣にしたいと求めて来る。
「オーナー、俺と一緒に暮らしてくれないか?」
「アゲハ様、一生を貴女に捧げます」
「あんた達って、もうすっかり貴族との見分けがつかない程に洗練されてるよね」
「アゲハ様の指導のたまものです」
「でもね。私を求めてくれるのは嬉しいけど、裏切ると怖いわよ?」
アゲハの異世界生活はMAXハイテンションだ。
次は私を裏切ったディビットにもう少しきちんと落ちて貰わなきゃね。
ミザリーも決して許さないよ!
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