第81話最高に幸せそうだった2
そして定時の時間が来たと同時に私はカバンを肩にかけてタイムカードを切りに行く。
一週間ぶりに会うので一秒でも水樹に会いに行きたいのだ。
「あんたも良い加減諦めなさいよ。 こないだ上司に厳重注意されたばかりでしょうに。 本当にクビ、最悪懲戒解雇もあるわよ?」
「そ、それでも一%の奇跡があるのならば諦めたくないっすっ!!」
「全く、どうしてこんなに意固地なんだか。 それに美奈子ちゃんじゃなくても他に良い女がすぐ近くにいるでしょう。 ちゃんと探してみなさいよ」
「え? それってどこにいるんですか? 俺美奈子さんと同レベルの女性にこの会社で出会った事なんか一度もないっすよ? むしろんな人がいるのならば教えて欲しいくらいっす」
「ほほーう。 分かったわ。 そんなに教えて欲しいならば教えてあげても良いわよ?」
「本当っすか?」
「本当本当。 だからコレから私と飲みに行くわよっ!」
「え? いや、それはちょっと……」
「あ? 私の酒が飲めないって事かしら?」
「いえ、そういう事ではないっすけど……」
「だったら飲めるわよねっ!! ほらっ! 行くわよっ!」
「ちょっ!? やめっ!! 誰か助けて……っ」
背後で何やら賑やかな声が聞こえて来るのだが無視して私は会社を出る。
翌週の月曜日、善子先輩と峯岸先輩が付き合う事になったと知るのはまた別の話である。
因みに善子先輩が峯岸先輩を酔い潰し、そのままお持ち帰りしたとの事である。
そして私はそのまま私の愛車であるMーボックスへと乗り、待ち合わせ場所まで車で三十分程走り、有料駐車場へ止めると、即座に水樹についた事を告げる。
すると間髪入れずに返信が来て、既に同じ駐車場に着いているという返信が返って来たので周囲を見渡してみると見覚えのある車の中から手を振る水樹の姿があった。
「ごめんっ! 少し遅れたっ!」
「いや、時間通りだから問題なっととっ」
そして私は水樹を見つけるなり車から降りてこちらへと歩いてくる水樹へ形だけの謝罪をしながらダイブし、それを水樹が受け止めてくれる。
「あぁ、やっと会えたっ! たった一週間だけど毎回この一週間がとても長く感じてしまうわねっ!!」
「まぁ、確かに大学時代はどこに行くにも何をするにも一緒だったし同棲までしてた訳だしな。 確かにそれが当たり前だと思っていたから一週間でも長く感じるな。 俺でも大学を卒業して数年経った今でもまだ慣れないくらいだからなぁ。 まぁ、その位美奈子の事が好きだって事でもあるんだが」
そんな、何回したかも分からない会話をした後、私たちは予め予約をしていた店へと向かう。
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