第78話昨日の私より2

 あらやだイケメン。


「そ、それを言ったら私も、過去の私よりも今の私の方が水樹の事をより深く愛していると断言できるわっ!


 私がそう言うと水樹は何がおかしいのか笑い出すではないか。


 すんなりと言えたように見えるのだが、これでもかなり言うのには恥ずかし感情を抑え込んで何とか言えたのである。


 もちろん、水樹が先に言ってくれたというのも勿論大きいのだが、そういう事ではない。


 私が恥ずかしい思いをしながら出した言葉を笑うだなんて。


「わ、笑わなくても良いじゃないっ!!」

「ごめんごめん。 でも、これで答えが出たんじゃないのか?」

「答え? 答えって何よ」

「それは、未来に行くにつれてより互いのことが好きに、そして幸せになるって事だよ」

「っ!!?」


 その水樹の一言を聞いて、まるで稲妻が体を走ったかのような衝撃を受けると共に、今まで悩んでいた事がバカみたいに思えてくるではないか。


 そして、さらに水樹の事が少しだけ好きになった。


「あ、ありがとう」

「まぁ、美奈子のモヤモヤが消えたのならば良かったよ」


 そして私達は、普段通りゲームの話などで盛り上がりながらお目当ての旅館へと着く。


 勿論、その間一度も未来に対しての不安などなく、むしろ未来が楽しみで仕方なくなっていた。


 だって、今が最高潮だと思っている水樹に対しての好きという気持ち以上に、好きだと、愛していると思っている自分が未来にいるのである。


 そう思うと今から楽しみで仕方がない。


「はい、ご予約の高城様ですね。 お待ちしておりました。 それではこちらに住所氏名電話番号を記載してください」


 そして私達は予め予約していた旅館の受付を澄まして割り当てられた部屋へと荷物を置きに行く。


 学生二人が泊まるために使える予算で考えれば、少し全体的に寂れてはいるのだけれども、それでも値段から見れば全然問題なく、むしろ安いとすら思えるほどの施設に満足である。


「うーーーんっ、着いたっ!」

「運転お疲れ様。 言ってくれれば私が途中から交代してあげたのに」

「いや、いいよ。 それに俺の夢でもあったからな。 好きな女性を助手席に乗せてドライブするの。 おかげで夢が一つ叶ったよ」

「そ、それはどういたしまして……。 それじゃあ、私の夢も叶えてくれるかしら?」

「お、なんだ?」

「好きな人を助手席に乗せてドライブするって夢。 まだ帰りが残っているでしょう?」

「はははっ、なるほどね。 そう言われたら嫌だとは言えないな。 分かった分かった。 帰りの運転は任せたっ!」

「おうともっ! まっかせなさいっ!!」

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