第74話サプライズ2
そう言いながら水樹が取り出すのは一つのネックレス。
「入学祝でプレゼントしたかったんだ。 クビにかけても良いかな?」
「う、うん……」
こういうのは、いつもズルいと思う。
私がサプライズを企てているといつも水樹に何故かバレてしまうにも関わらず、何故水樹だけサプライズが成功するのか。
その話を友人である真子に話すと「いや、水樹君も十分分かりやすじゃん。 むしろなんでアンタは気付かないのよ? その顔に付いている目は節穴か何かですか? いや脳みそが飾りなのかも」と言われてしまう始末。
悔しいが、そこで反論すると、如何にここ最近の水樹が不自然であるか私の説明した会話から一つ一つ指摘していくのだ。
今日の事だと、何で登校初日だというの別々に通学するのだろうか? と前々から相談していた為間違いなく「それ、普通に考えて違和感しかないのに何で気付かなかったの?」と言われてしまう事は目に見えている。
私だって今思えば、とは思うものの当時は何故かその違和感に気付けないのだから毎回悔しい思いをしているのである。
私の女の勘は何処へ行ったのだろう?
長期出張を許可した覚えはないのだが。
そんな事を考えながら、私は水樹からクビにネックレスをかけてもらう。
ハッキリ言って公衆の面前なので、何か適当な事を考えていないと恥ずかしすぎて死んでしまいそうなのだ。
そして水樹はそんな、恥かしがる私を見てサプライズという悪戯が成功したとご満悦の表情である。
悔しい。
言い返してやりたいのだが、ネックレスを貰ってしまっては言い返す事など出来るはずがない。
「あ、ありがとう……」
代わりに口から出るのは感謝の言葉。
このネックレスだって只ではないのだ。
きっとこの日の為にコツコツとアルバイト代を貯めて来たのだろうと想像すると少しばかりの悪戯など許してしまえる。
しかし、やられたらやり返すのが私の心情であり、やられっぱなしは嫌なので次こそは水樹に悟られてなるものですかと意気込むも。
「お前……」
「何か?」
「いや、何も」
「顔に『絶対にやり返して見せる』と書いてあるとは言えねぇ……」
「ん? 何か言った?」
「いや、何も」
「も、もうっ! マネしないでしよっ!!」
そして私たちは周囲の目もいつの間にか気にならなくなり高校時代のような感覚で校舎へと向かう。
別に、イチャイチャしているつもりは無いのだが、周囲からは良く「空気が甘ったるすぎて胸やけしそうだ」と言われていたのだけれど、流石に高校の友達の悪ノリだろうし、普通よ普通。
周囲から「口から砂糖を吐いてしまいそうだ」「朝から高カロリー過ぎて胸やけしそうだ」などと聞こえて来るのだが、気のせいだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます