第59話家族3

 それにしても、この風景を見ていると本当に水樹が私の家族に、それこそ結婚して数年経ったような感覚に時々なってしまう。


 きっと、こういう日常がこれから続いていき、いつか子供も出来て、たまに実家に帰っては孫の顔を見せて今以上に騒がしくなり、そんな未来が待っているにだろうと思う。


 そして、それと同時に私はまだ水樹の家族に会っていないというのがたまにチクリと胸に突き刺さる。


「お? どうした? 急に抱きついてきて。 家族のいる前では恥ずかしいからっていちゃいちゃするのは禁止じゃなかたのか?」

「ごめん、でも水樹成分を補充しないと今は無理かも……」

「そっか」

「うん」

「はいはいはーーいっ!! 私も水樹様成分が枯渇しておりますっ! 至急補充しないと危険な状況なので、抱き着かせて頂きますっ!!」

「アンタは補充する意味ないでしょうがっ!!」

「ケチッ!」


 そしてやはりというか何というか、いつものように妹の奈央子がしゃしゃり出て来るのでそれを片手でガードして水樹を死守するのだが、この時ばかりは胸にチクリと刺さった感情を有耶無耶に出来て少し、ほんっっっっの少しだけ、ミジンコレベルで有り難いと思う。





 ここ最近美奈子が不意に寂しそうな表情をするようになり、良く甘えるようになった。


 甘えてくれるのは正直な話有り難いのだけれども前までは美奈子の方から甘えて来る事など殆ど無かったし、会えたい時は俺から抱き着くようにさり気無くジェスチャーで伝えて来て、まるで美奈子から求めたのではなく俺から甘えて来たという体をとっていた。


 美奈子のプライドや羞恥心がそうさせていたのだろうし、それはそれで可愛かった。


 そんな美奈子が自分から甘えるようになり、それと時を同じくして寂しそうな表情をし出したのである。


 何かしらの理由があると思うのは当然であるし、彼氏ならば何とかしてあげたいと思うのは当然であろう。


 しかし、何度聞いても「何でもない」と美奈子は答えるのでここ最近はお手上げ状態であったし、だからこそ頻繁に美奈子の実家に遊び行って、美奈子の家族から何か手がかりが掴めるかもと思ったのだが今のところ空振りに終わっている。


 そんな事を思っているとマイナス思考を引きずりそうなので、違う話題で思考を切り替えようと美奈子に話しかける。


「なぁ、俺の親が美奈子に会いたいと言ってたんだが、美奈子が嫌じゃなければ今度俺の家に来るか?」

「はいはいはいっお姉ちゃんの代わりに私が行きますっ!」

「アンタはお呼びじゃないのよこの愚妹っ!! って、行くっ!! 絶対行くから水樹のお母さんに伝えといてっ!!」


 そう返事をする美奈子はいつもより元気にに見え、もしかしたら俺ばかり美奈子の家族にあっていて、美奈子は俺の家族に会っていなかった事を気にしていたのかもしれない、と妹とじゃれつく彼女を見て思うのであった。

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