第55話お家デート4

「え? ダメなの?」

「ダメに決まってるじゃないっ!!」


なんなんですかこの愚妹はっ!? 親の顔が見てみたいわっ!!


「えー、良いじゃない少しくらい。減るもんじゃないし」

「良くないし私と高城との時間が現在進行形で減っていってるわよっ!!」


 そして、尚食い下がってくる妹を半ば強引に私の部屋から追い出すとドアを閉めて鍵をかける。


 妹を追い出す途中、あの愚妹と来たらドアにへばりつき、剥がすのにかなり手こずってしまったではないか。


 あんな力一体何処からくるのか。


「…………ごめーんっ♪ 少しイレギュラーがあったけど、もう大丈だと思うから安心してね? えへへっ」

「いや、今更取り繕っても玄関からの一部始終を無かったことに出来るわけないだろ流石に。 むしろこの状況でまだ取り取り繕うとする方がヤバくないか?」

「う、うるさいわね。 ほ、本当は今日私以外の家族が出かけるって言うから一生分の勇気を振り絞って高城を呼んだのに、こんな事になってしまって……せめて今からでも取り返してやろうと思っただけですぅー」

「恥ずかしいなら言わなくても良かったのに、顔が真っ赤だぞ?」

「ばっ…………はぁ、もうやだ。 今日は何やってもダメな気がする」

「でも俺は新鮮で楽しかったぞ? それはそうと今日俺の事事ずっと『高城』って苗字で読んでるだが、家族の目がある手前名前で呼ぶのが恥ずかしいかも知れないが、ここには俺と美奈子しかいなんだからそろそろ俺の事を下の名前で呼んでくれても良いんじゃないのか?」

「わ、分かったわよ。 み、水樹」

「ん、よろしい」


 そして私達はどちらからともなく見つめ合う。


 よくよく考えてみれば今水樹が私の部屋にいるのだ。


 ただそれだけで何だかおかしな気分になってくる。


「ね、ねぇ」

「何だ?」

「今ものすごく甘えたい気分だからさ、座った水樹にもたれかかって後ろから抱きしめる奴やって欲しい……ダメ、かな?」

「それくらいなら。 それにいちゃつきたいってのは俺も同意見だしな」


 そして高城は私の願いを叶える為に初めからあったクッション(水樹が来るという事で昨日のうちから用意していた。下準備だけは完璧である)の上に胡座をかくように座り、その真ん中をぽんぽんと叩いて促してくるので慣れた感じですっぽりと収まると、そのまま体重を水樹に預ける。


 そうすると何も言わなくても水樹が後ろから軽く抱きしめてくれる。


 なんだかんだあったものの、この家に呼んで良かったと、今この時だけはそう思える事が出来るくらいには一気に幸せになってくる。

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