第54話お家デート3

 これぞ後の祭り。


 覆水盆に返らず。


 そして穴があったら入りたい、という状況である。


 いったい高城は今の私をどのような目で見ているのだろうか?


 まさかこれがきっかけでフラれる、なんて事になったら私は妹をどうにかしてしまいそうな衝動に駆られて、そしてその衝動を抑えきることが出来ず暴走してしまうだろう。


「いつまでこの世の終わりみたいな表情で突っ立っているんだよ。 家族がいるとは思わなかったけど、流石に俺も玄関から中へ入りたいんだが?」

「……………………先の光景を見て引いてないの?」


 しかしながら高城はというと普段通りな感じで私に絡んでくるので思わず先ほどの件について、恐る恐るではあるものの聞いてみる事にする。


「え? 今更だろ? そんなの。 これぐらいで引いてたら出会った瞬間にこの恋も終わってるわ」

「け、喧嘩を売っているのかしら? もしそうなら買うわよ?」

「いや、そんな事じゃ揺るがない程お前の事が好きだって事だ」

「なっ……ちょ、え?えぇーっ、えへえへ、えへへっ」

「お姉ちゃん気持ち悪い」

「何とでも。 その気持ち悪いお姉ちゃんが大好きなんだってさぁーっ。 えへえへ」

「それじゃお邪魔します」


 なんだ。


 そうなんだ。


 なんだかんだで高城は私にぞっこんラブなので気にする事など始めから無かったのだ。


 なんだかそう思うと、今まで無駄に小さな事で悩んでいたのだなという事を思い知らされると共に、今の私は妹からの嫌味も全て笑って返す事ができる。


 まさに慈愛の女神とは私の事である。


あぁ、世界は美しい。


「あ、あそこの自分の世界に浸っている変人の母です」

「ち、父親です。 親がこんな事を言うのもどうかと思うのですが、本当にあの娘で良かったんですか? 今のあの子は親の目から見てもその、なんと言いますか、アレですし……」


 そう思っていたのだがそれは間違いだったようである。


「高城にどういう自己紹介してんのよっ!? 子供の幸せを願うのが親というものじゃないのっ!? それなのに、なんでそんな、まるで私が頭おかしい人みたいな説してるのよっ!?」

「あら? 間違ってないでしょう?」

「人様に迷惑をかけないようにするのも親の役目だぞ」

「あぁもうっ! こんな家族無視して私の部屋に早く行こうっ! 高城っ!!」

「あ、これ一応念の為持ってきたお土産です」

「あらあら、どっかの娘と違って出来た人じゃない」

「ますます娘には勿体無く思えてくるな」

「こんな奴らにお土産なんか渡さなくて良いからっ!!」

「あ、ちょっ!?」


そして親にお土産を渡そうとしている高城の手首を掴んで強引に二階にある私の部屋へと連れて行く。


「お姉ちゃん、いつも散らかっているのに今日不自然なくらいめっちゃ綺麗じゃん」

「何勝手に入って来ているのよっ!?この愚妹っ!!」

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