第32話少し、少量、微量

「はい、何でしょう?石田さん」

「あの……み、水樹君とはお付き合いされているんですよねっ!?」


そして石田小百合はまるで清水の舞台から飛び降りるかの様な表情で私にそんな事を聞いてくるではないか。


やられたっ!と思った時には、すでに遅し。


周りの女性陣も、石田小百合の決死の質問を聞いた男性陣も身を乗り出して『興味津々』と言った表情を隠す素振りも見せずに見つめて来るではないか。


因みにこの中には眞子も含まれている為(眞子だけは興味津々という表情ではなく悪戯が成功したクソガキの様な今すぐにでも殴りたくなる、そんな笑顔であった)心の復讐ノートに忘れない様にメモしておく。


出来れば聞かれたくなかったし、このままなあなあにして、そしてはぐらかしながら一日を終えようと思っていた私であるのだが、こうもドストレートに聞かれてしまうとはぐらかしたり答えないという選択肢は取れない。


「わ、私と高城君の関係は………」

「「「「か、関係はっ………!?」」」」

「ゲ────」

「お付き合い(一緒にゲーム)している仲だよ。ね?ミナ。それにしても人見知りだって事は分かるけど付き合っている相手を名字で呼ぶのはいくら何でも俺はどうかなって思うんだが?」

「────ームないふぇはふぇのはんぇい(ゲーム内だけの関係)………」


そして私は嘘吐いたところでいつかバレるし、どうせバレるのならば今バラした方が良いのでは?素直に経緯を話せば自然とバレてしまうよりも私が受けるダメージは格段に少ないであろうと判断した為意を決して答えようとしたその時、高城が私のほっぺを片手で挟み喋り辛くすると、私の代わりに石田小百合の問いに答え、笑顔を私に向けて来る。


その笑顔を見た私は少し漏らした。


何を?とは言わないのだが漏らした。


少し、少量、微量、最早これは漏らしていないまである。


「ねぇ、恥ずかしがらずにいつもの様に『みずき』って呼び捨てで呼んでよ。何だか高城君って呼ばれるの慣れてなくてムズムズするんだよな」


いつ私が高城の事を呼び捨ててで呼びましたかねっ!?証拠っ!!証拠の提示をお願いしますっ!!眞子裁判長っ!!これはかなり悪質な冤罪事件ですっ!!


「へー、あのミナが呼び捨てで呼ぶなんて、よっぽど仲が良いのね。羨ましいっ!!」

「そうなんだよ。だから『君』付けだとものすっごく壁を感じるんだよね。そんなの嫌だからさ、この旅行でもミナからは呼び捨てで呼んでもらいたいんだけど?」


コクコクコク


頬を掴まれ、覗きこむ高城の目を見た私は物凄い速さで首を縦に振るのであった。


因みに心の復讐ノートには眞子の名前が更に追記が確定された。




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