第26話流石の私でも理解している
本当は聞こえていたのだけれども、それを肯定してしまうと私はこのまま勘違いしてしまいそうになる為あえて保身のためにも聞こえないフリをした。
あの高城が私なんかを、百歩譲って万が一、何かしらの奇跡か何かが偶然重なった結果、化粧をした私の事を綺麗だと、本当に思ってくれていたとしても、私の事を好きになる事等ありえないのだから。
わざわざ子供でも分かるような事で勘違いをして、振られて悲しい思い等する必要はない。
それにいくら綺麗に見えたと言ってもそれより綺麗なクラスメイトや同じ高校の女生徒達にいつもちやほやされているのである。
私なんかそもそもあの、普段から綺麗になろうと努力しているであろう彼女達に太刀打ちできるはずなど無い事くらい、流石の私でも理解している。
『どうした?ミナ』
『んーん、何でもないっ!!それよりもお月見草原を周回しようよっ!!』
『まぁ、良いけど。何か言いたい事とか気になる事とかあったら遠慮せずいえよな?』
『はいはい分かりましたー。まぁ、グラン如きが解決出来るとも思えないけれどもその時はこき使ってあげるから覚悟しといてね。やっぱり言ってない何て言わせないから』
『やっぱり前言撤回しようかな』
『はいはい。じゃあ行くわよっ!!』
私はクラスメイトや高城の事が好きな娘達と違い一緒にゲームで二人っきりの時間を堪能させて頂いているのである。
それ以上は流石に高望みであるし、今この状況ですら恵まれすぎであろう。
大丈夫。
私はまだ高城の事を好きじゃない。好きにならない。
◆
「ねぇ、水樹君……」
「ん?何?」
「夏休みの事なんだけど皆で海に行く事になってるんだ。一緒に行かない?」
一限目の休み時間、石田小百合が高城にそんな事を言い出していた。
盗み聞くつもりなど無かったのだが、最近何故か高城関係の会話が良く耳に入ってくる気がするのは何故だろう。
そして石田小百合は高城が彼女(高城の自称でありその相手は何を隠そう化粧した私)がいる所を実際見ているにもかかわらず誘える勇気が凄いと思ってしまう。
彼女どころか周りの女性のレベルの高さだけで棄権している私とは雲泥の差である。
まるで無課金と重課金兵との差をまざまざと見せつけられている様で少しばかり不愉快である。
ちなみに彼女がいるという高城に声をかけているのを見たからとか、私がいるのにとかいう嫉妬心等からくる不愉快という感情ではないとはっきりと言っておこう。
「うーん、どうだろ。一旦妻に聞いてみないと分からないから返事は後でも良いか?ごめんな」
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