第16話騙されたとしか言いようがない
◆
あ、暑い。
季節は変わり梅雨が明け我が地域も一気に夏らしくなってきた。
「しかし、暑いな」
「そ、そうね」
そして日本特有の湿度の高い暑さにうんざりしていると、隣で歩いている高城がその事を口し、それに私は肯定する。
今現在私達はうだる暑さの中、二人でコンビニへと向かっていた。
そもそも今日は高城の住むマンションにお呼ばれした私はなんの疑問も持たずに無駄に親が金持ちである事を主張してくるマンションへと向かう事になったのだが、先日の洪水で地下が浸水した影響により今現在電気系統が故障している箇所がある様である。
とはいっても一か所ダメになったからと言って全てがダメになる訳ではないので冷蔵庫類などには影響は無いのだが、かといって完全に以前と同じように使えるという訳でも無いらしく昼間の間だけ節約もかねて三時間ほどエアコン類などの電気を多く使う物の使用が制限されているらしい。
はっきり言って騙されたとしか言いようがない。
マンションロビーの一角では高い金を払っているんだからどうにかしろという住人と、おそらく外注でオーナーに雇われているだけの管理人が罵詈雑言を一身に受けている姿が見え、視界に入らない様にしながら手軽に涼める場所という事で近くのコンビニへと二人で向かっていた。
で、なんでこんな状況にも関わらず私が呼ばれたかと言うと高城曰く「一人で長時間もの間コンビニやデパートで涼むのが『あの人さっきから長時間居座ってるけど、きっとあそこのマンションの住民だわ』と店員に見られてしまうのではないかと、そしてそう考えた時一人で居座るのが恥ずかしいから」という事らしい。
いや、一人で行けよ。とは思うもののご主人様の命令とあれば自分の意思に関係なく嫌でもはせ参じるのがペットという可哀そうな生き物なのである。
「てかもうマクドで良くない?コンセントもWi-Fiもあるし」
「え?マクドって飲食店なのに何時間も居座って良いのか?コンセントやWi-Fiを勝手に使っていいのか?そもそも行った事が無いからシステムが分からん」
あぁ、忘れてた。
コイツんちタワマンに住む金持ちだったんだわ。
ふぁ〇く
◆
「はぁ、涼しぃぃいいっ………生き返るわぁ………」
「そ、そうだな」
「何マクドごときで緊張してんのよ。どうせ外食とかはマクドなんかでは比べられない程のお高いお店に行っているくせに」
「否定はしないがそれはそれ、これはこれだろっ。経験が無いというのは何事でも緊張するだろう。決して俺がマクドだから怯えている訳ではないわっ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます