第15話今如実に実感していたりする

「良いじゃねぇかよ。それに俺のペットを俺が可愛がって何が悪い?」

「減るっ!!減ってるっ!!確実に減っていってるからっ!!」


さっきから『高城に惚れないバリアー』のエネルギーがガンガン減って行ってるからっ!!


「よしよしっと。しかし撫で心地の良い髪質だな、ミナは」

「う、うるさいわね…………………い、妹が色気づいたおかげで我が家に少しばかりいいお値段のシャンプーとリンス、そしてコンディショナーが新たに戦力として加わっただけよっ」


セクハラでいつか訴えてやると思いながら我が家のお風呂事情を教える。


今現在中学二年生の妹が、中学に上がるのを切っ掛けにお風呂事情の改善要求事件は未だに家族観で語り継がれている歴史の一つである為、未だに私はあの日の事を鮮明に覚えていたりする。


ちなみに妹は徹底抗戦の末、洗濯物の仕事を割り振られることと、お風呂場がごちゃごちゃする為統一し、他の家族も使用するという条件により勝利を辛くももぎ取ったのである。


そしてこの事件により約被害一名、そうお父さんである。


五十代のおじさんが、いきなり髪質が変化していきいい匂いさせながらキューティクルが出ているサラサラヘアーへと目に見えて変化していく様は、我が娘ながら気持ち悪いと思ったので職場ならなおさらであろう。


ただ、当の本人は「職場で若い子たちに『シャンプー変えたんですかーぁ?』なんて聞かれちゃってさ」とご満悦みたいで髪も昔と比べて少し長めのヘアスタイルへと変化したりと楽しんでいるみたいなので、それだけが救いであろう。


なので決して『年老いたおじさんの髪ですら艶がでてくる正体商品名が知りたい』だけでありお父さんの髪に興味がある訳ではないという真実は、家族間で暗黙の了解として告げてはならぬ禁止事項となっていたりする。


でも確かにたかだかコンディショナーだのトリートメントだのシャンプーリンスあーだこーだだの、そんなものを変えるだけでここまで変わるとも思ていなかったので私自身嬉しい誤算でもあったのだが。


そんな事を考えていたからか、高城と一緒にごはんを食べているという緊張感は無くなり、まるでグランと話しているかの様な雰囲気で会話しながら食事を進めていく。


そして他人に私が作った料理を「美味い美味い」と言われながら食べてもらえる事がこれ程までに嬉しい物なのかと今如実に実感していたりする。


今度お母さんの料理を食べた時に美味しいと言ってあげようと思えるくらいには。

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