第13話初めて感じる感覚

そう嬉しそうに言うと高城は満面の笑みを私に向けて来る。


あ、危なかった。咄嗟の事でガードが緩んでいて思わずあの笑顔でトゥンクと惚れてしまうところだった。


あの腹黒野郎に惚れるなど、あってはならぬ事である。


なまじルックスが一級品の為常に気を引き締めなければ、と再認識する。


「はいこれ。ちゃんと作って来たから」


そして私はこれでおしまいとばかりに回れ右をしてこの息苦しいリア充の空間から脱出を試みようとするもそれを高城が私の右手首をつかみ阻止されてしまう。


「は?何言ってんの?当然一緒にお昼食べるだろ?」

「えぇぇぇ………………」

「うわっ、すっげー嫌そうな表情だな。とりあえずここだと視線がきついだろうからどっか二人になれる場所でも行こうか?」


そして高城は私の耳元で、私にしか聞こえない様に囁く。


耳元で囁かれるだけで頭の先からつま先まで電流が走ったかのようにぞくぞくとした初めて感じる感覚に私は全身の毛が逆立つのが分かる。


そして何言ってんのか分からないのは高城、お前の方であるという言葉が口から出てしまうのをギリギリ抑え込む事は出来たのだがぞくぞくした感覚も相まって自分の気持ちが言葉に出なかった代わりに表情に出てしまった様である。


反省はしていない。


悪いのは高城なのだから当たり前だ。


「分かったわよ。行けば良いんでしょ。行けば。どうせ拒否権なんか無いのでしょうし」


そして私は、未だ私の耳元にある高城の顔を手で押しのけながら肯定の旨を返事する。


「ごめんみんな、今日はちょっと用事できたから俺に構わずお昼食べといて」

「えー何何?このモッサイ芋女と何かあんの?気になるんだけどー?」

「それに関しては流石に秘密にさせてくれ。ほら、昼休みが無くなっちまうから早く行くぞ」

「えっ?あっ!ちょっとっ!?水樹君っ!?」


そして高城は私が肯定したのを聞くと彼の周りに集まっているいつものリア充メンバーへ向けて一緒にお昼ご飯を食べれない旨を告げる。


それを聞いた学校単位で見ても片手に入る程モテている石田小百合が、私を見ながら高城に質問するのだが、高城はそれに答えるつもりはないと一蹴すると掴んだままの私の右手首を引っ張り、教室から出て行くと、追いかけようとしてくる女性陣から逃げる為に二人一緒に駆け出すのであった。


あぁ、後で眞子になんて説明しよう………。





「なんとか撒けたようだな」

「え、ええ。そうね………」


息も絶え絶え、何とか撒けた様なのだが、とりあえず今は息一つ乱していない高城が憎い。

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