第12話町内引き摺りの刑
やっと、悪魔で魔王な我がクラスの王子様がご帰還なさった。
その事に私は一気に緊張感が抜け落ち弛緩してしまう。
「お父さん、今日一日ずっとそうやって不機嫌でしたけれどもよくよく考えてもみなさい。美奈子があれ以上のレベルの男性を捕まえられるのかを。そもそも男性を捕まえられるのかすら怪しいという事を」
「お姉ちゃんは多分最初で最後のチャンスだと思うわ」
「………………………美奈子、彼を逃してはならないぞ。そして妹の加奈子しか見れないと若干思い始めていた孫を、美奈子もこのお父さんに見せてくれ」
そして私は心から思う。
この家族を町内引き摺りの刑にしてやりたいと。
そして私のスマホには『月曜日ミナの作った弁当が食べたい。オカズはこないだゲーム内で話してた青椒肉絲が良い』というメッセージが来ていた。
◆
月曜日。
結論から言うと弁当は作って来た。
それもオカズにしっかりと青椒肉絲を入れて。
「どうしたの?ミーコ。顔色が悪いんだけど。何ならまだ予鈴まで時間あるし保健室一緒に行こうか?」
「大丈夫、ありがとう眞子。でもこの原因は具合が悪いんじゃ無くて精神的なストレスであるという事を私が一番理解してるから」
「そうなんだ。むしろそれはそれでやばいんじゃないの?」
そしてそんな私の事を心配してくれる眞子の存在は精神的に助かっている為本当にありがたいと言わざるを得ない。
眞子が居なければ恐らく、既に精神的に潰れていてもおかしくない。
そもそもの話誰が悪いかと言えばあのグラン改め高城とか言う野郎のせいなのである。
この弁当、作ったは良いがどうやって渡すのか、考えただけで胃がキリキリと痛み始めるのであった。
◆
そして時間は無情にも皆平等に同じ速さで進んで行き昼休みを告げる鐘の音が鳴り響くと共に本日担当の日直が授業の終わりの挨拶をする。
こうなれば自棄である。
赤ちゃんプレイと土曜日撮られた妹とのやり取りを晒される位ならばあのリア充グループに囲まれている高城に弁当を渡す方がマシである。
むしろマシであると思わなければやってられない。
そして私は正に言葉通り決死の覚悟であの輪の中にいる高城に向かって歩き出す。
目的の場所まで着いた所でこのリア充グループの女性の一人が私に気付き怪訝な表情を見せるも構うものか。
私は反対方向を向いており私が来た事に未だに気づいていない高城の制服の袖を摘むとちょんちょんと引っ張る。
「ん?ああミナか。本当に作って来てくれたのか?ありがとうなっ!!」
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