第6話むしろ被害者
◆
昼休みの鐘の音が鳴り、日直の号令が終わると同時にクラスが騒がしくなる。
そしてそれとは対照的に私は静かに闘志を燃やし始めていた。
「ミーコ今日お弁当?」
「あー、お弁当だけど殺る事出来たからごめん、今日は一緒に食べれない」
「やる事?まぁ良いや。そのやる事が何なのか分からないけど時間余ったらイベクエのを
「分かった。直ぐ殺る。今すぐ殺って片付けて来る」
「行ってらっ」
私の、静から動に変わった燃え盛る闘志とは対照的に眞子が何とも気の抜けた返事を返して来る。
ちっ、コレだから平和が当たり前だと勘違いしている嬢ちゃんは。
平和とは犠牲の上で成り立っているという事を噛み締めて生きて欲しい。
「ええ、行ってくる。このミッションの依頼料はいつものスイス銀行へ振り込んでくれ。それでは」
「毎回思うけどミーコのネタって偶に古過ぎて多分私じゃないと分からないよ?」
そして私はB棟の理科準備室へ、まるで背後に立たれると怒るスナイパーのような凛々しい表情で向かうのであった。
◆
「たのもーっ!!」
B棟理科準備室の扉を開くや否や私は開口一番道場破りもかくやという挨拶で入室していく。
「いつも俺の方が遅いのに今日はミナの方が遅いんだな」
「ここであったが百年目っ!死ねぇグランっ!!骨位は拾って上げるわっ!!」
そしてそんな私をいつもの余裕めいた落ち着いた雰囲気で先客がからかってくる。
先手を取れる状況で先手を取らず、更に緊張感の欠片も無い声で話しかけて来るとは何たる体たらくっ!
そして私は入室時の勢いそのままに声の主へ殴りかかろうと襲い掛かるのだがあっさりと私の素人パンチは弾かれてしまい、そのまま手首を掴まれてしまう。
圧倒的不利な状況。
絶対絶命の大ピンチ。
普段なら手首を掴まれただけでは止まるはずも無くそのまま反撃の一つや二つ、口撃の一つや二つどころでは無いのだが、しかし私は何も出来ずにただ止まってしまう。
ち、近い近い近い近いっ!!
何故ならば右手首を掴まれ頭の上まで持ち上げられれば必然的に身体が密着してしまう訳で、その結果、私とグランの中の人との顔が近くにある訳で……。
「どうした?顔真っ赤じゃねぇかよ」
「う、煩い………それもこれも全てグランが悪いし」
そうだ。それもこれも全てグランが悪い。私は悪くない、むしろ被害者である。
まさかグランの中の人がクラスのヒエラルキー、そのピラミッドの頂点に君臨する高城水樹だなんて聞いてないしっ!
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ハムハム→ハムクエです。
由来はハムスターが回転車輪をカラカラ回して同じ所でずっと走っている様から同じ所を周回する事を指すそうです。
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