第3話

身の回りの整理は大体終わった。

荷物の整理、家電の使い方、家具の設置etc…

自分の知識が無いせいであの女がよこしたマニュアルを嫌でも使わないといけないのはとてつもなく不快だった。

特に電子レンジで卵を調理した時は最悪だった

『殻を割らずに調理すると美味しいゆで卵ができるよ!』

とあったからその通りにしたら爆発するし…

とりあえず友人だと思っていたあの女は友人とは言い難い存在だと言うことは身に染みた

しかしこれ以外に地上の知識はほぼ無いに等しい

文化についてはある程度の理解はあっても電化製品等は地獄にはない

よってマニュアルに頼ることになる

その度にあの女の笑顔が浮かび破り捨てそうになるが我慢しなければならない…

既に半分破れているがきっと気のせいだろう

断じて私が破った訳では無い……うん無い!



『地上にはねぇ…ホイル焼きって言う美味しい料理があるんだよ?鮭の切り身と野菜とマヨネーズを入れてレンジでチン!たったこれだけで野菜の旨みと鮭の旨みが調和した美味しい料理が出来るんだよ!』


とか書いてあるが正直当てにならないてか怪しい

これが嘘か本当なのか…見分けるためにまた時間を要するのであった




【同時刻】



「お隣さんかなり騒がしい方だな…」

男の名は佐藤 蓮

日本で1番多い苗字に1番多い名前を持つありふれた23歳の男児であった

時は僅かに遡る


今日はお隣に誰か引越してくるらしい

どんな人が来たんだろう

と思い窓から外を見るが引越し業者は僅かな荷物を運びその後すぐ帰って言ってしまった


「少しでも良いから顔を拝んでおきたかったな…」


コミュニケーション能力は低くはないと自負しているが さすがに引越し直後だし疲れているだろうと思い、明日辺りに少し挨拶に行こうそう思っていた矢先だった


ドン!!!


爆発音。

しかも隣から

なんの前触れも無く

そして「んんああああああああ!!!あっつ!!!!!」

と言う女の声

一般家庭で爆発なんて普通起きない

研究者みたいな人が引っ越して来て実験でもして爆発を起こしたのかな?と思い一旦納得する

「とすると病的に勉強いや研究が好きな方……か」

佐藤も大学院に通うまだギリ学生を名乗れる人種である

身内には「勉強しないのに大学院行ってなんの価値があるのか」等と言われたが全くその通りである

自分でも今後の見通しが立たずに正直困っているのだ

「言われなくても分かっているよ…でも何も思いつかない こんな迷える子羊がいても神様は導いてくれない

やっぱり宗教なんて嘘っぱちだな」

そんなことをボヤきながら手元のポテチが切れている事に気づく

「電子マネー残ってたかなぁ…」

コンビニまでは500m軽い運動ぐらいにはなるし足らないものもついでに買い足そう

そんなことを思いながら準備を始める

もう隣の人の事などあまり気にならなかった

なぜならその思考自体が逃げである と理解したからだ

え?買い物は逃げじゃないのかだって?

バカヤロー!!!これは逃げじゃなくて準備なんだよ!!

外に出た


見慣れた風景にいつも無いものが1つあった


黒いスーツ 黒い靴 黒い髪 全身を黒で多いつくしその中にあるひとつの別の色 赤い目

どこかの国から来たハーフだろうか?

こんなボロっちい所にいるっと言うことはこの人が今回来た方だろうそう思い声をかける

「あの…なにか困ってますか?」と





「……分からない…」

ホイル焼きあまりにも未知である

卵が爆発したのはまだ理解出来る

そして電子レンジがものを爆発させる道具では無い事も先程野菜を調理し理解した。

だからホイル焼きなるものもおそらく出来るのだろう しかし……

そうわざわざこのマニュアルに書いてあるという1点がとても気になる

今までのパターンから見るに嘘と本当の事を混ぜながら書いて来てあるこのマニュアル…間違いにも思えるが本当の事とも取れる


「やはり趣味が悪いこれを作ったやつは性根が腐っているな」


不快感を口に出しながらも悩む……

もちろん答えは出ない

仕方がないので外の空気でも吸って気分転換をすることにした


外に出る

空気が美味しい……とは正直言い難い

不味くはないが美味くもない なんとも微妙な気分になる


「あの…なにか困ってますか?」


急に後ろから声をかけられる

ただでさえイライラしながら過ごしているのに一体誰だ と考えた所でハッとする

おそらくお隣さん

確か佐藤……と表札があった気がする

ご近所関係は良好にする事を心がけろ と送り出してくれた家族が言っているのを思い出す

なのでニッコリ笑顔で爽やかに「いいえ大丈夫ですよ」

と返した


つもりだった

そう いつもの平常心を保った鬼女なら出来ただろう

ただ今は平常心もくそもない 先程までの微妙な気分は話しかけられた と言う不快な要素で天秤は大きく触れたのである


「問題ない失せろ」


彼女はいつも部下に言う態度で隣人に話してしまった……!





「!?」

佐藤に電撃走る


可憐な美女

からやべーやつへのクラスチェンジが早い……!!


佐藤は一般的な男児であった

のでそんなぞんざいな扱いを受ける様な行いはされる義理は無いしかしキレた所で何も生まない

そこは理解している でも腹は立つのでこの女に対しては二度と敬語は使わない覚悟を決める


「あっそ ならいいよ まあこれからお隣さんになるしよろしくね?」


佐藤自身何がいいのかさっぱり分からないが反射的にそう返してしまった

まあ初対面の人にあれだけの事をサラッと言ってくるのだ


問題は無いだろう




やらかした…!!!

反射的に部下にストレス発散する時の口調で…!!


「あっそならいいよまあお隣さんになるしよろしくね?」


しかし男は気にして無さそうだ


そういえばキツく罵倒されるのが趣味の人種もいるっと前聞きましたね…

こいつはそういう人種なのだろうと納得する

なら気にする必要は無いだろう


「やはり待てゴミムシ お前に聞きたいことがある」

ふっ…我ながら完璧なS……さすが仕事ができる女……!!!

さあ佐藤よ…喜びながら私の頼みを聞け!!!


「????」


佐藤の反応が悪い

もしや足りなかったか

「お前以外に誰がいる 個体名佐藤お前の事だ」

今回は罵倒を含めて居ない

焦らしプレイなるものを試したかったからだ


「あんた…もしや外人さん?」


予想外の答えが帰ってくる

「」

確かに外人とも言え無いことも無いが外人では無いよなぁ……と思い思わず答えが出なかった


「ああなるほど…外人さんか いや日本人っぽくも見えるって事はハーフか

まあどっちでもいいやとりあえず会話で暴言を吐くのはやめて欲しい…」


何故か佐藤が泣きかけている

理由は…まさかさっきのゴミムシと言う単語……!?

こいつメンタル弱!!

しかし勝手にm奴隷なるものと決めつけるのは良くなかったようだ……

とりあえず謝る


「それは申し訳ない で、要件なんだが……ホイル焼きと言うのは電子レンジでできるのか?」





女から意味の分からない質問が来る

今どきレンジにアルミホイルを突っ込んだらどうなるかなんて小学生でも知ってるだろうに

……しかしこいつあれだ間違いないいるだけで人災なやつだ…ここは綺麗に答えて関係をスパっと断ち切ろう


「いやできないよ」

「……!!…なら何なら作れる?」

「トースターならできたと思うよただ日頃自炊しないから正直うろ覚えだ」



一瞬彼女が凄く驚き喜んだように見えたがきっと気のせいだろう


「じゃあ俺は飯買いに行くから」


さっさと切り上げてダッシュで逃げる

こういうのは逃げるが勝ちなのだ……!!




一方取り残された鬼女は

要件を話した途端すぐに答えを出し撤退……

「あれは…使える……!」

と新たな知識の源を見つけ喜んでいた


そう佐藤は1つだけ間違いを起こした

逃げたことでは無い

タメ口だったことでもない

この知識に貪欲な鬼女に知識を与えてしまったのが失敗なのだ



隠して彼の苦労が始まる

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地獄勤務から地上勤務に転勤させられた鬼女 Rabi @rabi5280

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