第四十五話 医者「何でだろうね……?」(異常値)

 時は少し先へ進む(⁉)


「何でだろうね……?」


 内科医は不思議そうにどこか気の抜けた調子で呟いた。


「何ででしょうね?」


 世楽はオウム返しのように同意した。

 人手不足ゆえか、それとも健康診断シーズンだからか、内科受診は結果通知から約半月後に実現した。

 世楽は診断結果を医師に渡し問診に臨んだ。

 酒飲みなのでここ1年は軽い運動や休刊日を設けるなどしていること。極端に偏った食生活を送っていないことを告げた。そう、確かに前回の結果でもLDLは高めではあったが、ここまで上がる理由はないはずなのだ。


「肝臓を悪くしないよう気を付けていましたし、値は良くなった。肝臓の値が良くなればコレステロール関係の値もおのずと良くなると、そう考えてました」

「そうだねぇ……」

「「何で―」」「—だろうねぇ」「—でしょうね」


 加えて肝臓の状態は改善したのだ。LDL値は下がってもいいくらいの状況のハズなのだ。しかし、前回から40以上の数値アップを叩き出したのだ。

 医師はおもむろに口を開いた。


「甲状腺、喉にある器官から出るホルモン異常があるとこうなる場合があります」

「ファッ⁉」


 世楽は恐れていた。この期に及んで飲酒にドクターストップがかかることを!

 そこに登場したのは甲状腺! 生物の教科書くらいでしかお目にかかったことのない臓器!


「採血をしましょう。通常の健康診断ではコレは検査しない項目ですので」

「……ハイ」


 元より採血は予定していたので、そこは淡々と済ませてその日は終了となった。

 ちなみに、この受診は午後の時間に行われたもので世楽は半休を取得した。何故かというと元々は『空腹時の検診だから午前が良いでしょう……予約は1ヶ月後で』と言われたからである。

 皆さん、かかりつけ医は確保しておきましょう。


 さあ、次回からはドクターストップ回避のために受診までに世楽が行ってきた悪あがきを紹介していきます!

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