王太子殿下は後宮に占い師をご所望です
夢見るライオン/ビーズログ文庫
第一章 青貴婦人、壺を売りつける
1-①
デルモントーレ国、王都のはずれにある森の中。
入り口横に立てかけられた木には『青貴婦人の館』と書かれている。
男は黒いフード付きマントで身を隠すようにして周辺を
閉め切った
「ようこそ青貴婦人の館へ。今日は何を
丸テーブルの上の
黒フードの男は、
そして冷たく整った口元は
「ある高貴な方の
占い師、青貴婦人。
そう呼ばれているフォルテは、今日は一大決心をして占いにのぞんでいた。
(今日こそやるしかない。今日やらなければ
ごくりと
黒マントから
(絶対どこかの大金持ちの貴族だわ。ともかくこれはチャンスよ)
たまにこういう男性客もいる。だが
「え? 恋愛?」
だから男が椅子に座るなり、
「私の友人に非常に
「わ、分かりました。その男性の生年月日とお名前を……」
「生年月日はお教えしますが、名前はご
貴族の相談には、名前を明かさないことはよくある。
「分かりました。では、名を心で唱えてその方の顔を
生年月日をトネリコの葉に書きつけ、フォルテは様々な形の小石が入った
「どうです? モテる男なのですが」
十二宮が火地風水で四
「モテる? 本当に? 占いでは、女性と縁のない生活をされてきたような……。女性よりは……こんなことを言っては失礼かもしれませんが、食べることが大好きでは?」
「ほう?」
栗毛の
「それに武官とおっしゃいましたが、剣を使うような器用な方かしら? 外見は
「なるほど……」
「でも、未来に明るい
「意外にも本物だったか……」
「え?」
「いえ、なんでもありません。では、もう一人占っていただきたいのですが」
「ええ。構いませんわ、では生年月日と……、お名前は出せませんか?」
「はい。心で強く、強く、念じておきましょう」
目のギラつき方から、明らかにさっきより気合が入っている。
どうやらこっちが本当に聞きたかったことなのだとフォルテは思った。
(もしかしてご自分のことかしら?)
人のことのようなフリをして自分のことを占いに来る客も多い。
(二十五歳……)
トネリコの葉に書いた生年月日からすぐに計算した。
目の前の男の
「この方は……、ずいぶん
「ええ。また失うことを
「お気の毒に……」
「気の毒がっている場合ではないのです。いい加減結婚してもらわないと困るのです」
「二十五なら……それほど慌てなくともこれからではないですか」
「いいえ。この際
その言いように、自分のことではなかったのかしらとフォルテは考え直した。
「まあ! この
黒フードの貴族は、ぱあっと顔を
「その通りです! 確かに非常に有能な側近がおります!」
「あら、でも少し出張り過ぎかしら。お
「……」
男は、しばし
「あら? ここにピンクの石に乗ったエメラルドがございます。エメラルドは
「なんと! それで、そのご
黒フードの貴族は身を乗り出して
「い、いえ……、そこまではさすがに……」
「何歳ですか?
「いえ、残念ながら……。でも、そうですわね。お二人の間にはまだ
「乗り越えられなかったら?」
「そうですわね。残念ながらお子には恵まれない人生かもしれません」
「なんということだっ!!」
男は
その
「ご、ご心配には
そしていよいよこの時が来たと丸テーブルの下から取り出したものを、でんっと黒フード男の眼前に差し出した。
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