第3話:婚活舞踏会・ブルーザ王太子視点
なぜ俺がこのような情けない場に来なければいけないのだ!
俺の次に王位を継ぐ者は、俺の子供でなくても構わない。
年の離れた弟でも、弟達の子供でも、全然構わないのだ。
だから俺につがいが見つからなくても、子供が生まれなくてもいい。
天虎族の誇りと血統を護ることこそ、王家王国を護る事なのだ。
絶対に天虎族同士の間に生まれた者を後継者にすべきなのだ!
父王陛下や母上が俺の事を愛し想ってくださるのは嬉しい。
その思いやりを無碍にできないから、この場に来てしまった。
本当はグレンデン大王国内で、天虎族内でつがいが見つからなかった時に、もっとはっきりと父王陛下や母上の言うべきであった。
だが、あれほど愛情豊かに勧めてくださると、断るに断れなかった……
「王太子殿下、つがいは見つかりましたか?」
この男もグレンデン大王国内ではつがいが見つけられなかった。
俺とは違って、他種族でもいいからつがいを見つけたいと思っている恥知らずだが、まあ、士族家程度ならそれも仕方がないだろう。
武勇が突出しているから俺の側近にまで選ばれたが、元々は下級士族だ。
親類縁者から純血の天虎族を探すのは難しいだろう。
「ふん、こんな場所に俺に相応しいつがいがいるわけないだろう。
父王陛下と母上は同じ天虎族のつがいなのだ、俺が無理に他種族のつがいを見つけて子供を作らなくても、お二人にもっと子供を作っていただけばいい」
俺の言葉を聞いて何とも言えない表情をしやがる。
恐らく父王陛下と母上に何か言われているのだろう。
父王陛下と母上の気持ちはうれしいが、他種族と夫婦の営みをするなどおぞましくて絶対に出来ない。
人族やオーク族など、近寄られるだけで毛が逆立ってしまうわ!
「殿下、あちらにおられるのは、竜人族のグリード皇太子殿下ではありませんか?
殿下がグリード皇太子殿下をお嫌いなのは存じておりますが、礼儀上挨拶された方が宜しいのではありませんか?」
そんな事は言われなくてもとっくに気が付いていた。
気が付いていて、気がつかないふりをしていたのに、口にしおって、愚か者が!
だいたい何故俺から挨拶しなければいけない!
そんな事をすれば、天虎族が竜人族の下だと思われてしまうではないか。
挨拶は、奴から俺にすべきなのであって、俺から奴にするものではない!
「愚か者!
俺から奴に挨拶しろというのか?!
天虎族の誇りを何だと思っているのだ!」
小さく押し殺した、だが全ての怒りを込めた叱責を受けて、身を縮め尻尾を丸めて恐れているから、これで怒るのは止めてやろう。
それにしても、竜人族でもつがいが見つからないのだな。
確かにこの状況では異種族婚活は仕方がないのかもしれないが、それは神に見捨てられた種族や王家だからだろう。
誇り高く生きている我が家は、父王陛下が同種の母上をつがいとされている。
それにしても、グリードの奴さっきから何をチラチラ見ているのだ?
いけ好かない奴だが、堂々とした態度は人の上に立つに相応しいと思っていた。
それが今は妙にオドオドとして情けない態度をしている。
このような場に来たことを情けなく思っているのなら、その気持ちは分かるが。
人間、人間をチラチラ見ているだと?
まさか、まさか、グリードのつがい相手が人間だと言うのか?!
笑えるな、やはり竜人族は天虎族には及ばない下種な存在だ。
事もあろうに、皇太子のつがいが下劣な人族とはな。
あのような、あのような貧層で醜い生き物をつがいに選ぶとは……
何故だ、何故目が離せなくなるのだ。
何故心臓が早鐘のように鳴り響き、身体中に血流が駆け巡るのだ!
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