第10話俺だけ飛ばされるって本当ですか?!

 朝食を終えた俺たちは、昨日渡された武器をそれぞれ持ち、地下にある【覚醒の神住】に向かった。


「こちらになります」


 そういわれたダンジョンへの扉はとても固く、厳重に閉ざされていた。まぁ、魔物とやらが出るらしいし、仕方のないことだが、いちいち外すの大変そうだなぁ。


「では、参りましょう」


 俺がそんなことを考えていたら、ダンジョンに続く扉は全開になっていた。どうやら下り階段になっているようで、セレスさんが先頭となり、その階段を下り始めた。俺たちも後に続き、階段を下り始めた。


「なぁ、勇」

「ん、どうした?」

「さっきは強く当たってすまなかったな。 あの場はそうするしかなかったんだ」

「もういいよ。 気にしてないし」

「そうか」


 俺たちは長い長い階段を下りながら思い思い、雑談をしていた。余裕に見えるって? だってこの階段くそ長いんだぜ? もう十分は下ってるのに、まだ終わりが見えないとか嘘だろ?


「みなさん、そろそろダンジョンの一階層につきます」


 さらに五分ほど下ったところでセレスさんに声をかけられた。先ほどまでの空気は存在せず、得体のしれない緊張感があった。


「一階層では小鬼ゴブリンと呼ばれる魔物しか現れませんが、それでも油断なさらぬようにしてください」


 

 なるほどね。ゴブリンなんてテンプレのまんまじゃないか。いいね、テンション上がってきた。


俺達はダンジョンの一階を進んだ。二階にセーフティーゾーンなるものがあるらしく、そこを目指して進んでいるようだ。

 そしてついに俺達は遭遇した。初の魔物と。


「グギャギャギャ!」

「来ますよ、あれがゴブリンです!」


 ゴブリンは身長百センチほどの、全身緑色をしている。汚い腰布をつけ、手には木で出来た棍棒のようなものを持っている。そして何より、額からは小さな角が生えている。


「まずは俺から行こう」

「おー、頑張れ、金ぴか塗装悪趣味勇者サマ」

「それ辞めろって言ってんだろ?!」


 そんなことを言いながら勇はゴブリンに向かっていくと、黄金の大剣を振りおらした。ゴブリンはあっけなく切り裂かれ、死骸の代わりに小さな石が一つ残った。


「はぁはぁ、これは?」

「それは魔石です。 簡単に言ってしまえば魔力の結晶体のようなものです」

「そうなのか……」

「では、勇様のように皆さんにも同じことをしていただきたいのです」

  

 そして、探索が再開した。


「ここで一時休憩です」


 全員がゴブリン討伐を終わり、セーフティーゾーンに来ていた。みな、思い思いの休憩をしていた。にしてもここに来てから変な声が頭に響くんだけど、何なんだろうか。

 すると、ふと、端にある祭壇なようなものが気になった。


「なぁ、セレスさん。 あれは何なんだ?」

「あれは、神々の像が納められている祭壇です。 あの祭壇のおかげで、この階には魔物がわかないのです」

「なるほど」


 なんか、祭壇の方に呼ばれてるような気がするんだけど、行っても平気かな?俺は祭壇の方にあるき、祭壇の元にたどり着くと


《特定の波長を感知。 転移を開始します》


 そんな声が頭に響いた。足元には魔法陣が展開されている。


「おい、蓮!それなんだよ?!」

「俺が知るかよ?!」

「と、とにかくそこから出てこい!」

「そうしたいんだが、さっきから見えない壁に阻まれてんだよ!」

「な?!」

《転移を実行します》


 そんな無機質な声と共に俺はどこかに飛ばされた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る