if_神は神だと知らなかった

@kokumozu

プロローグ

第0話

ただ一人、その空間にいた。過去の自分に必要な言葉だけを伝え、自分は考えることを辞めたかった。


すぐ近くは砂漠。現在私が座っているとこは、その中にある小さな遺跡跡地。彼女が最初に訪れた『コレジシア国』跡地。ただ、実際にはその後多くの文明がこの地に都市を築き上げ、現在彼女が座っている崩れた跡地は何・億・年・も修繕保存された跡地だ。百億年前のコレジシア王国の建物はすでに無くなっている。ここにある遺跡はその後の文明のものだ。しかし、その修繕保存をするもの達もいなくなり、何千年も放置され、ほとんどが一方通行な気候変動に耐えきれず、風化し、腐食し、倒壊し、現在の姿となっている。


「ねえ、本当にあれで伝わったと思うの?」


いきなり現れ、話しかけてきた彼女は私が最初、露出魔だとか痴女だとか、神様もどきだとか女神とか呼んでいた彼女、『女神シーナ』は哀れな眼差しを私に向けてくる。


「伝わったよ。過去の自分だ。自分に伝えたいメッセージはしっかっりと伝えたさ」


そう、あの宿屋であの言葉で確実に未来は変えられる。あの時、無様でも生き残る選択肢を取れば大幅に未来を変えられた分岐点。未来を見なくても世界線分岐、その法則さえ分かってしまえば最初のあの場所が変われば世界は大幅に変わる。その確かな確証を持ってあの時たった1つ、自分を動かすことができるメッセージを残してきた。


「自分のことは自分で1番分かっているって言うけど、それは自信過剰じゃないかしら」


彼女はこの世界に来てすぐの私…いいや僕のようなことを言っていた。99億年以上前の僕だった頃の自分を見ているようだ。


「みんなそう言うよね。でも、こればかりは自分が1番分かっている。元々単純な思考だからこそ、現在自分にできない事、それがあるという事を自分に見せてあれば、最低でもその言葉は覚えていてくれる。その時が来たら動いてくれるさ」


「でも結局あの世界線のあなたの未来、見てこなかったじゃない」


そう、確認はしてこなかった。しても今の自分には意味が無いからだ。


「もし確認したとしてダメだったらあの自分がやってくれる。私の役割はあそこまで。大規模な世界線分岐が起これば、大幅に未来は変わる。私が助言したって場違いな事を言ってしまうだけだ」


「まあ、あなたが良ければ私は特に何もしないし、何もできないわ。もうあなたは自分の未来を諦めているようだし」


彼女は初め、私を未来へとっ進ませようとしていた。だけど、私が完全に諦めると同時に彼女はあまり私を行動させようとさせる言葉をかけなくなった。色々苦労を掛けてしまった。




事の始まりはあの王都、あそこで自分は間違えたのだ。王都と言ってもはじめは良かったのだ。少し自分には迷いがあった。行動とかには出さないよにしていたがまあ、見る人が見ればわかってしまうだろう。そんな自分がいた。最初の大きな分岐から、自分は道を間違え続けてきた。そこ結果がこれだ。




ほぼ全ての生物が死滅した惑星表面。人類が宇宙に出て太陽のエネルギーを吸い取り、大きなエネルギーを得られるようになった。しかし、それは太陽の寿命を大幅に奪った。本当はこのような状況になっるのにはあと、1兆年というとても長い時間が必要だったのだ。彼らはエネルギーを吸い付くし、文明を大幅に飛躍させ惑星間航行をも可能にしこの星をほとんどの知性ある生命が出ていった。それが1万年前の出来事。僅かに残った人類は惑星の気候変動に耐えきれずその2000年後に絶滅。魔物や魔獣、モンスターといった生物以外は完全に消滅し、そいつらも現在、湧いたと同時に大体が耐えきれずに消滅する場所がほとんどだ。森も海もなくなり、灼熱の大地と、耐久のある文明の1部の建築物だけが残った。もうすぐ大気も燃え尽きるだろう。




私は死んでも生き返る。死んだ場所から少し離れたところで。基本的に他はその時の姿、種族と変わらない。

だが1つだけ弱点があった。魔法による呪いとかもブラックホールによる強大な重力でも他世界などで死んでもこの世界のこの世界線でのみ、この惑星で復活する。この惑星がある限り。


どう足掻いても消滅出来ず、生き続けるか、死に続けなければならない。しかし昔、ちょっとした実験中にやらかした時に1つわかったのは大気がないとこに長時間いると私は一時的に睡眠モード。つまり冬眠に近い状態となる。長時間と言っても水中だと3時間ぐらい、真空空間では体内の酸素が完全に抜けていて破裂しなければ1時間と言ったとこだろう。


唯一ある救済措置だ。死ねないのなら眠れ。そういうことだろう。





色々考えているうちにシーナは居なくなっていた。太陽が赤色巨星となり、収縮して超新星爆発を起こすまで私は魔法で自信を保護しつつ大気だけは外と同様の状態にするように魔法を展開する。






最初の分岐さえ上手く行けば、負の連鎖は続かないと確信あっての行動。自分はもう、生きることに限界を迎えた。自信がないのだ。何をやっても失敗すると恐れてしまっているのだ。


もとよりメンタルはそこまで強くない。豆腐メンタルよりも脆い自信がある。例えるならば「この世界に存在してもしなくても、木端微塵になるレベルのメンタル」だ。豆腐よりも確実に脆いだろう。よくこんなんで100億年生きてきたと自分を褒めたい。




気がつけば外は砂嵐で視界がほとんど無かった。意識も朦朧とし始めた。太陽が吹き飛ぶまでは死なずにこの防御魔法の中で眠り続けられるだろう。タイムマシーンより自身のある特性の防御魔法だ。太陽の熱にも耐えてくれるだろう。




「嗚呼、なんでこんなに悲しいのだろうか…」


なぜだろうか…不思議と涙が出てくる。今まで寝ることすら怖くて、魔法で百年間は寝ずにいられるようにしていた。そのせいで余計に精神不安定にはなっていたが、知性ある生命と接触するのが怖かった。生きるだけでも辛かった。もう、自分でもどうしてこんな自分で自分を苦しめるような行動をしたのかが分からなくなってきた。


「楽しく…生きたかった…」


大粒の涙を流し、彼女はゆっくりと意識が薄れていく。この世界で唯一の…転生者として、特別な力で死ねず、存在があいまいなものとして生き続けて、己の失敗を乗り越えられなかった彼女は…



「自分に…勝てないなんて…哀れ…だ…ね…」



それが彼女がこの惑星で最後に喋った言葉だった。

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