6章第3話

 俺は宙に浮き始めていた。俺が飛べるというわけではない。名無き神に吸収されるために、ペレグリヌスに近付き始めているのである。もうダンテの肉体は必要ないと言えば必要ないが、捨てていく必要も特にないからそのままだった。ところが、そのときだった。


「おいイケメン! 待つウサ!」


 イタクァが俺に声をかけ、近寄ってきた。俺は無視し、そのまま宇宙空間に向かっていく。


「こら、ウサを無視するなウサ! もうしょうがないなウサ! イタクァ・ブリザード!」


 イタクァは口から猛烈な吹雪を吐き出し、俺を凍らせた。俺の動きが止まる。


「こうなることはある程度予測はできていたウサ! 実はウサは別にただイケメンがイケメンだから攫いに来た通りすがりのウサだったウサではなくて、魔界の王サタン様の命令を受けてお前を見張るためにやってきていたのウサ!」


 と、リオンもいつの間に起きたのか、外に出てきた。寝間着は着替えていた。いつもの服装。


「ダンテ。行くな」

「俺の正体が分かったら、俺は用済みなんじゃなかったか? 教えてやるよ。俺の正体は、妖星ペレグリヌスと呼ばれる名もない神の、その端末、意識だけの存在だ。意識だけの存在になっていたんじゃなくて、最初から意識だけの存在として生み出されたものだったんだ」

「……そう。でも……行かないで。わたしを置いていかないで。わたしはダンタリオンじゃない。わたしは、ただのリオン。あなたを……愛してる。だから、行かないで」




【サタン】キリスト教悪魔学


 キリスト教悪魔学のすべての悪魔たちの王。またの名を大魔王ルシファーという。かつて神に対する反逆を企て、戦いに破れて魔界に封じられた。

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