美化委員ガチ勢のラブコメ

ヒゲメガネ

プロローグ


「ぜってー3階の男子トイレだろ!あそこは汚いし、臭いが廊下にまで漂ってきて最悪だぁー!って女子全員愚痴ってるし……」

「白亜には、階違うから実害無いしどうでもいい……でも、敦美たちが可哀想だから賛成する」

「……そうだね。まあ、トイレなら物も少ないし、すぐ終わるだろうし……」

「そこなんだよなぁ……」

「……?すぐ終わるなら嬉しい。敦美は何でしょんぼりさん……?」

「いやだってさぁ、物がなかったらアタシの出番ねーし、男子トイレだぞ?やる気でねーって」

「まぁ、敦美ちゃんには次の機会に活躍してもらうとして……男子トイレに適役の人がいるじゃん!」

「あー……そっか。確かに適役だな、臭いも強烈なことだし……」

「じゃあ、白亜は参加しなくてもいい?いいよね?」

「そうだね!この際全部、薫くんにやってもらおっか!」



 私立玖梨院くりいん学園のとある一室にて、美化委員会による会議が行われていた。

 参加人数は4人。

 美化活動の実施場所の提案をした、すこし乱暴な口調の女子生徒で、この委員会の特攻隊長でもある芥崎敦美かいさき あつみ

 淡白な話し方をする唯一の1年生、神戸白亜こうべ はくあ

 美化委員会の委員長であり、とある男子生徒に仕事を丸投げしようとしている女、平御雪たいら みゆき

 そして……


「おい、それはおかしいだろ!」

「えぇ~、でも男子は薫くんしかいないんだし……」

「それでも、何かしら手伝うことの一つや二つあるだろうが……」

「おい、薫」

「……な、なんだよ?……敦美」

「お前、臭いフェチだろ?何をそんなに嫌がってんだ?」

「字がちげーよ!匂いフェチなんだよ俺は!誰が男子トイレの臭いで興奮するか!」

「興奮するなよ、キモいなぁ……ここは男子トイレじゃないぞ?」

「興奮してるんじゃなくて、キレてんだよ!あと、話聞けや!」

「ねぇねぇ、かおるん?」

「……どうした?白亜」

「あんまり暴れないで……ほこりが舞うから」

「お、おお……それはごめん」

「ん。いいよ……でも、自分の気持ちには正直になった方がいいよ?好きなんでしょ、男子トイレ」

「好きじゃねーよ!もう絶対に3階の男子トイレなんか行きたくないわ!」

「え……じゃあ薫くんはどこで用を足してるの?……ま、まさか!女子トイレで用を足してるの⁉」

「極端すぎんだろ!何で好きじゃなかったら女子トイレに行くことになってんだよ!」

「女子トイレ……イく……?薫くん、まさか……」

「お前は男子中学生か!……頼む、もうこれ以上つっこませないでくれ……疲れた」

「突っ込むのが……つかれた……?」

「だああああああああああああああああああ!」


 ……そして、仕事を丸投げされ、3人の女子生徒に対して1人でツッコミ役をこなしている薫くんこと、薫こと、かおるんこと、俺、湊瀬薫みなせ かおる


 俺たち4人はこの学校の美化委員であり、現在、次なる美化活動の予定について真剣に話し合っていた……はずだった。

 しかしながら、この委員会に所属している奴らはみんな頭がおかしい。

 ここで話が若干ズレるが、頭のおかしい奴らの巣窟(俺以外)である美化委員会について簡潔に話そうと思う。

 我が校の美化委員会は、普通の高校のように1クラスから男女1人ずつ選ばれるわけではなく、美化委員長直々にとりわけ優秀な人材を選出しており、一般生徒からだけでなく教師からも一目置かれる存在であるらしい。

 俺も委員長、御雪のよくわからない琴線に触れたのか、美化委員として選ばれ、これまで様々な美化活動に従事してきた。

 だから、この委員会メンバーが如何に優秀かは十分に理解したし、能力面に関しては尊敬できることも多い。

 しかし、同時に気づいたこともある。


 そう、こいつらは天才は天才でも、ちょっとアレな天才だったのだ。


 バカと天才は紙一重とはよく言うが、この天才どもはバカなんかじゃなく、ただただ頭がおかしいんだと思う。

 そう、話が戻るが美化委員は俺以外頭がおかしい。

 だから、活動内容について真面目に会議する場でもすぐに脱線するか、納得しがたい結論を叩き出しやがるのだ。

 

 あぁ~、やんなっちゃうわ~


 本当に疲れる。

 マジで。

 特に頭のおかしい委員長と、何考えてんのか分からん無表情ロリと脳筋めすごrrrrrrrrrrrrrrrrrr痛い痛い痛い痛い!


「誰が納金ミスエンジェルだって?」

「言ってない!言ってない!脳筋メスゴリラなんて言ってな……いや、マジで納金ミスエンジェルは身に覚えないから!」

「へぇ、脳筋メスゴリラかぁ」

「はっ⁉しまった!図ったな貴様!」

「お前が勝手に言ったんだろーが」


 くっ!敦美は野生の勘が鋭すぎるな……迂闊に変なこと考えられない。

 というか、さっきから後頭部にぶっ刺さってる木刀早く抜いてくれ。


「かおるんってやっぱり変人」

「だね!匂いのことになるとバーストしちゃう変態だし、最近は自爆して自ら敦美ちゃんの木刀の錆になりにいってる気がするし……もしかしてドMだったり?」

「お前……マジか……木刀はお前を喜ばせるだけだったのか……」

「なわけあるか!お前らの方がよっぽど変人だろ!」

「え、私たちなんか変なことしたっけ?」

「い、いや……今日はたまたま、あんまりしてないけど……」


 そう俺が言うと、3人は目を合わせあい、そして俺をジッと見つめると、


「な、なんだよ?」


「「「一番頭おかしいのはやっぱり……」」」

「薫くんだね!」

「薫だな」

「かおるんだよ」


それだけは……


「それだけは絶対ないから!」


これから証明していってやる!!


「ま、それはそうと男子トイレの”美化活動”、しょうがないからアタシが手伝ってやるよ」

「白亜はやらない」

「私もちょっと……」

「委員長がそれでいいのかよ……」

「ま、まぁ、敦美ちゃんと薫くんは明日よろしくね!」

「へいへい」

「任せときな」

「じゃあ、今日は委員会終了!お疲れバイバイ!」


 今日も散々振り回されて一日が終わる。

 ”美化活動”においてはその才能を遺憾なく発揮する天才たちも、日常生活においては普通の女の子……じゃないか。

 どちらかと言えば……いや、まぁ、何でもない。

 敦美が近くにいるうちは余計なことを考えるのはよそう。

 兎にも角にも、こうして活動しない日の美化委員会は終わっていくのだった。




 

 



 

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