北海道旅行②について

翌日は朝5時過ぎに起きました。

前述した通り、最近は麻雀ゲームにハマりすぎた影響で明らかに睡眠の質が落ちていたのですが(全然眠くならない)、久々にぐっすりと眠れた感じがします。民宿の布団も自分がいつも使っているものよりも快適な感じすらします。

といっても5時間弱の睡眠で、副交感神経が優位に働いてきたせいなのかとても眠かったですが。

まあそれでも何とか起きて、昨日の夜セコマで買ってきた朝食を軽く食べて出発の準備を整えます。


そして6時15分に迎えが到着したとの連絡が入ります。

そうです、2日目はこの旅のメインイベントとも言える「流氷ウォーク」に出発するのです!

迎えに来てくれたインストラクターさんの車で近くの流氷ポイントに向かいます。

途中他にもツアー参加者が車に乗り込んできました。若い大学生風の2人組男子、20代半ばくらいの男性、あとは親子連れ3人、私と田中さん(仮名)、そしてインストラクターさんの計9名で流氷ウォークが始まりました。

天気は依然として良かったのですが、この日は特に寒かったようでマイナス8℃などと言われていたように記憶しています。ドライスーツといって海に入っても海水が侵入してこないような衣服を着ているので、身体自体はそれほどでもないのですが指先や顔・耳などは特に冷たかったです。


さて、流氷ウォークとはその名の通り流氷の上や中などを歩くことを目玉としているツアーです。

すでに海岸は流氷で満たされているような状態でした。

海岸の階段を降りるとすぐ目の前に分厚い流氷が浮かんでいます。その上を辿り歩いていくと、すぐにかなり沖の方まで進むことが出来ました。

ただ当然のことながら流氷は氷ですので、割れたり沈んだりもします。

足を乗せる場所に気を付けなくてはなりませんが、前の人が大丈夫だったからと言って自分が必ずしも大丈夫ではないのが、自然というものです。時々足を滑らせたり、足の乗せ方の問題なのか体重の問題なのか氷が沈んでしまう人もいました。

厳寒の氷漬けの海に沈んだら相当ヤバいのではないか?と思うかもしれませんが、ドライスーツの効力は素晴らしく海水も一切入ってこないですし、海の中は氷点下の外気に比べれば温かいのでそれほど問題はありません。そもそもこの辺りは膝くらいの浅瀬が多く、海の中を歩くことも楽しめるのです。

ただドライスーツは顔までは覆ってはいないので、海水が顔にかかったり、深い場所で頭まで海に沈んでしまうと大変です。落ち方次第によっては流氷に浮かび上がるスペースを妨げられ、そのまま上がって来れない……といった事例もあるそうです。

撮影タイムでは写真も撮りました。スマホを収納出来るスペースがドライスーツにはないのでインストラクターの方に預けておいて、適切な場所と時間を決めて撮影をしたのですが……まあ手袋から出した手がかじかんでですね、撮影にはそれほど情熱を注げませんでした(私は元々写真のセンスがないというのもありますが……)。


そんな感じで流氷ウォークを1時間半ほど堪能しました。

厳寒の場所で流氷の上を歩く、という圧倒的に非日常の体験ではあったのですが……岸辺の数十メートルをぼちぼち歩き回っただけで、一人6000円の参加費を取るのか……という気持ちが無かったと言えばウソになりますね。まあ過剰に期待し過ぎていたとも言えるし、観光地とはどこもそんなものかもしれませんが。

しかしあの景色を忘れることはないと思います。


そんなわけで今回の旅のメインイベントである流氷ウォークを終えたのですが、時刻はまだ午前8時を過ぎたばかりです。

ウトロの道の駅に降ろしてもらったのですが、道の駅もまだ開いていません。

荷物を背負いながら近くの『オロンコ岩』『ゴジラ岩』を目指して海岸まで歩くことにします。

数十分歩いていると背中の荷物がやたら重く感じられるようになってきたのですが、その主原因は今もこの文章を打ち込んでいるノートパソコンです。

夜は結構ヒマになるだろうから少しでも執筆進めといた方が良いよな……という気持ちから一応パソコンも持ってきたのですが、結局2泊3日の旅の最中にパソコンを開くことは一度もありませんでした。持って来なければ行きの飛行機で重量制限に引っ掛かることもなかったでしょうに……。


まあ、海岸沿いの道を10分ほど歩くとゴジラ岩に到着します。その名の通り形がゴジラに似ているから付けられた名前だそうです。もちろん映画ゴジラが放映される以前からその岩はあったわけで、当時は別の名で呼ばれていたのでしょう。

それからオロンコ岩に着きます。ゴジラ岩に比べてオロンコ岩はかなり巨大でした。全長は100メートルくらい、高さも20メートルくらいはあったでしょうか。真ん中にはトンネルが掘り抜かれていました。オロンコ岩には岩の頂上に上る道も作られており、上から眺めるオホーツク海の流氷を含めた景色は絶品でした。

ここではキタキツネとも遭遇しました。キツネさんは思っていたよりも小さく可愛かったです。その他にもキツネとは異なった足跡が雪上には幾つもあり、おそらくシカではないか、ということに私と田中さんとの間で結論が出ました。

オロンコ岩の上で数十分間滞在したのですが、その時下では除雪車による除雪作業が開始されていました。車の前面についている回転式の爪で掻き込み、ブロワーで20メートルくらい雪を海上に吹き飛ばす除雪車の威力は、上から眺めていて中々楽しかったです。


オロンコ岩を下りて(雪と氷の道のりで上りよりも下りの方が骨が折れました)、道の駅ウトロに戻ると時刻は9時を過ぎており、道の駅も開いていました。

荷物をコインロッカーに預け、お土産屋を一周して、10時に開店した食堂で早めの昼食を食べながら作戦会議を開きます。田中さんは鹿肉のソースカツ丼、私はニシン蕎麦を食べました。

大まかに予定は決まっているのですが、細かい所はその時決めようや……というノリで今回の旅は行っているので、時々こうして予定を考える必要があります。

田中さんは海外経験が多いからそういう風になるのかもしれませんし、私もその場の思い付きで動きたいタイプなので、むしろあまりキッチリ日程が決まっているのは苦手です。

その日の夜は網走市内の民宿に泊まる、ということだけが確定事項として決まっていました。

当初はウトロ周辺で自然名所を巡り、夜に網走に向かう……というようなイメージだったのですが、私は飛行機のパンフレットに掲載されていた網走市内の民族博物館の方に惹かれていました。

しかしまあせっかく知床の大自然の中に来て、流氷の上を少し歩いたくらいで引き返すのももったいないだろう……ということで4キロほど先の『フレペの滝』という場所に向かうことにします。

4キロというと歩けない距離ではなさそうな気もしますが、雪と氷の道そして小高い山の上ということもあり、タクシーを呼んでもらいます。


結果的にはこのフレペの滝に行ったことが大正解でした。

時間的制限もあったため雪深い森の中を2人小走りに進んでいきます。田中さんとは去年富士山も一緒に登ったのですが、その下山の際の感覚と似ていました。

途中ツアーで訪れているグループとも遭遇します。彼らはスノーシューというのような装備を履き深い雪の上でも沈むことなく進めるのですが、我々二人にそんなものはなく踏み固められた箇所に足を撞き、時に足を取られながら何とか進んでゆきます。真っ白な雪面を進んでゆくのはとても気持ち良かったです。

そして20分ほど歩いたでしょうか、やがて断崖絶壁に面した『フレペの滝』に到着します。滝と言っても季節的なせいか水量はごくわずかなのですが、その高さ、青く光る氷柱……特別視される場所だというのも頷けます。

方角的に樺太が見えるかと思い陸地のような黒い影を認めたのですが、あれが本当に樺太だったのかは定かではありません。


さて、電車の時間も差し迫っているので帰路につきます。ここでは野生のエゾシカの群れに遭遇しました。5,6頭が群れを成しており、1頭だけやたら角が立派なヤツがいたのであれがオスだったのかもしれません。

ここでも相変わらずガイドを伴ったツアー客も多かったのですが、それを追い越して我々は帰路を急ぎます。途中道を間違えて、入ってきた所とは別の場所に出てしまったのですが無事に戻ることが出来ました。正味1時間ほどの滞在でした。


そんなわけで、行きに送ってくれた運転手の方が時間通りに迎えに来てくれました。……あまりに時間通りなので「ひょっとして来ないんじゃないか?」と少し不安になったことは内緒です。トランクに荷物を入れていたこと、バスに乗り遅れたら今日の予定は大幅に狂うことなどネガティブな想像も一瞬よぎりましたが、無事に運転手さんはやってきました。


こうして無事に道の駅ウトロに戻り、網走方面への12時10分のバスに乗り込むことが出来たのです。


……二日目は午前が終わっただけですが、長くなりそうなので一旦区切ります。




(つづく)

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