白い鳥

　白い鳥が空を飛んでいました。

　鳥は、町の門を抜け、市場の屋根の上を舞い、町の果てにある大きな遺跡に辿り着きました。それは、住民も祀られている神の名を忘れているような、ろくに手入れもされてない朽ちた神殿でした。

　鳥は周囲を少し警戒してから、古の神々を象った装飾の隙間から神殿の中へ入りました。

　神殿の中は暗く汚らわしい嫌な空間でした。しかし、さっき鳥が入ってきたような隙間がいくつもあり、そこから何条もの光が差し込んで内部を照らしており、それが奇妙な美しさを生み出していました。

　鳥はその中のひとつの光線に沿って床へ降りました。

　床には小さな巣があり雛が餌を待っていたのです。

　鳥は雛に餌をやると、入ってきた隙間に向かって飛び立っていきました。