白い梨の花と月

白い梨の花と月

            三崎伸太郎 04・04・2025


大木の梨木に白い花が満開

白い雪のような花々の間(あいだ)に、空に浮かぶ白い月が見えた

梨の白い花びらのように白い丸い月

梨の花はひらひらと風に漂い落ちてくる

静かに静かに落ちてくる

雪のように落ちてくる

丸い月が辺り一面になった

春の朝の空は淡い青

月は水晶宮(すいしょうぐう)

私は白い花びらを踏みしめて梨木の下から空を仰いだ

月は私を見下ろした

私は両手を合わせた

白い梨の花に月を見る

両手の中に月を聞く

梨の白い花々は散る

雪のように散る花

音もなく頬を打つ白い花びら

明日に夢を見て

居眠りをしていたら春が来た

ありきたりの春が来た

梨木の下で月を見る

両手を合わせて月を見る

祈りが月に届くなら

私は月に住む

ウサギと一緒に餅をつく

底辺の生活は白い梨の花のように舞うばかり

社会に迷って、人生に迷って梨の花のように散るばかり

一つ一つの花びらに時間の憂いが乗っている

白い花びらは雪のように積もる

私は月に向かって手を伸ばした

月は私を見下ろした

ウサギが餅をかじる

私は小さい白い梨の花びらを口に入れた

白い餅

月を見上げて食べる花びら

梨の花はひらひらと風に漂い落ちてきた

静かに静かに落ちてきた



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る