詩集

彼岸花

秋の日願花（彼岸花）

私は彼岸花を日願花と思っていた。

三崎伸太郎　０９・２６・２４

山村の隠れ田畑のあぜ道の横

彼岸花が咲く。それは曼殊沙華、それはみどりの山すその間、Uの字の底辺り

私の白いカンヴァスには空に白い雲

振り返ると村のすそ野にススキの揺れ、パラりと手を広げた

まだ夏なのに・・・

でも秋が来て

山裾の広い田畑の向こうは霞に隠れていた

ススキの穂がパラり、パラり

彼岸花

曼殊沙華

母がいた

振り返ると、思い出がよみがえる

山裾の谷間の向こうに秋が来て、じっと見つめる曼殊沙華

私のカンヴァスに谷間の向こうの秋を描く

母が彼岸花を見つめている

母さん、この花には毒があるよ

でも、私は、この花が好き

お釈迦様は蓮の花の中、いやいや曼殊沙華の花の中

ほら・・・

母さん、私は母を呼んでみた、秋の山すその谷に向かって呼んでみた

ほら・・・

曼殊沙華

遠くの村が霞に覆われている

母さん

山村の隠れ田畑のあぜ道の横

彼岸花が咲く。

まだ夏なのに・・・

ほら・・・ね

＊母は、コロナの最中に亡くなった。私は葬儀にも出なかった。アメリカに住んでいた。未だ、墓参りもしていない。