第14話 サバゲーオタク

 

 魔王は、粒子になって消滅した。彼の言い分では、封印されただけらしい。取り敢えずオレの寿命の間に出てくることはないだろう。


 俺は、他の人を連れ階段を登った。


「ユウキ様……大丈夫なんでしょうか? こんな場所で魔王が出てきたんです。ここより先に更に強い敵が出る可能性も‥‥」


 ソフィが不安そうに俺に問いかけていた。安心させるために彼女の茶髪を撫でる。即座にふにゃっとした顔をする。


「大丈夫だよ。何かあったら俺が守るし、それにここからは中層だ。敵も弱くなるしソフィもレベルが上っているだろ?」


「はい‥‥そうですね。今のソフィのレベルはどれくらいですか?」


 俺はソフィのレベルを確認してみると、現在のソフィのレベルは25だった。思ったより伸びが低いあのムカデ魔王討伐に参加してたんだ100前後は言っていると思ったが‥‥


 ちなみに俺は490レベルになっていた。10レベル上がっているオレのレベルでここまで上がっているということは、オレが経験値を吸っていったということだろうか? それとも彼女の龍の籠手がレベル上昇を阻害しているのだろうか?


「ユウキ様! 前方にゴーレムが来ています!」


ソフィが警戒した声を出す。俺が剣を構えるとメルが俺の方を叩く。


「さっきのスナイパー貸してくれない?私も戦いたいんだけど」


仮にも聖女と名乗る人間がスキルで作られた銃を笑顔でぶっ放すっていうのはどうなんだろうか?まぁ彼女の評判が下がるだけなので渡しておこう。メルは銃を受け取ると嬉しそうに眺め始めた。


「ばーん」


メルがおれに銃を向けて楽しそうにそう言った。オレの背後でソフィがゴーレムを殴りつけゴーレムの破片がこちらに飛んでくる。


「うおぉ! びっくりした。ソフィ!危ないからもう少し丁寧に倒してくれ」


「すみませんユウキ様!」


ソフィがペコペコとオレに謝る。俺はそのまま他の人を連れ上に進んだ。暫く進むと大量のゴブリンがいる部屋にたどり着いた。部屋から出ることがないので外から攻撃することにした。魔王城から持ってきた杖をスキル化した火炎攻撃をモンスターハウスに飛ばす。


1分ほど撃ち続けると中のゴブリンは全滅した。ソフィが楽しそうに魔石を集めるのを待ち俺たちは先に進んだ。だいぶ先に進んだはずだがまだ地上に着かない。付いてきている人達も俺が魔王を倒して安心したのか表情がかなり緩んでいる。


「ねぇ私もヘッドショットしたいんだけど」


メルがそう言って銃を大切そうに抱きかかえる。


「なぁ? メルって前世でFPS廃人だったりしたのか?」


「そそそそそ、そんなわけないじゃない!聖女よ! 私そんな乱暴なゲームしないわよ!」


メルはかなり激しく目を泳がせ手をバタバタ振る。


「俺もFPS好きだったぞ」


そう言うとメルが目をキラキラ輝かせた。そして490レベルの俺でも目視できない速度で俺に接近した。


「何! なんのゲームやってたの? えへへこんな所で同士に出会えるなんて思ってなかった~」


心底嬉しそうにそういうメル、俺はゲームしかやら無いのだがこのメルのテンションはサバゲーをやっていたテンションだな‥‥なにか専門用語と銃の型番らしき物をつらつらと並べているメルの話は9割聞き流していた。


「あ、あの‥‥メルさん俺PCゲームしかし無いんだけど」


「あ‥‥‥そ、そう‥‥私もやってたけどねうん」


気まずくなった。するとソフィが嬉しそうに俺に話しかけてくる。先程のメルの話には入り込めず困っていたらしい。


「ユウキ様、私にも今度銃というやつの使い方を教えていただけませんか?」


「いいけど、ソフィは魔力あんまり持ってないだろ? そんなに使えないんじゃないかな?」


「ユウキ様あの銃はスキル産とおっしゃっていましたが、つまり元となった物をお持ちなのでは? ユウキ様のスキルは強力ですが、それはつまり魔力の消費も上がっているのでは無いでしょうか?」


「そう言われると確かにそうかも知れない‥‥じゃあ魔王城から持ってきた魔銃渡すから撃ってみてくれ」


俺は、ソフィに銃を渡そうとしたが横からメルが掠め取った。


「ひゃーーーコルトM1848じゃない! ユウキ! これください!」


テンション爆上がりのようです。よくわかんないけどそのリボルバー連射できるからメルの期待に添えるとは思えないんだが


「返してください! それはユウキ様が私にくださったものです! 聖女が他の人間から物を奪うなんてどうかしてます!」


ソフィも怒り始めた。メルは俺が渡した銃を命の次に大事なもののように抱きかかえ離さない。


「嫌よ! サバゲーオタク舐めるな! 死んでも離さないから!」


必死の抵抗をするメルから銃を取り上げるのにかなりの時間を要した。

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