第三十八話「リベラ」
我はリベラ。ドラゴンだ。ドラゴンというのは不可思議な生物だと口を揃えて人間は言う。一ノ瀬未来はそんな不可思議なドラゴンが七匹揃う島、条約に寄って守れている島に生まれた。
我はまだ百年しか生きておらぬが故に過去に何があったのか知らない。ドラゴンというのは契約した場合、主が死ねばドラゴンもまた死んでしまうように出来ている。
人間には寿命が存在する。
我がもし死んでしまった場合は、死者の魂が寄り集まって似た個体を作り出すそうだ。それもこれも研究され事実だと聞かされている。
だから我は契約はせずに、パートナーとして生きているのだ。主は一ノ瀬未来の妹である
――――しかし、あの島に囚われ人生が終わるのが嫌だと拒んだ一ノ瀬未来を誰が責めることが出来るのか。島の他の者は皆、自由を保証されているのに。
ドラゴンの魂を人間と統合すれば、不死になれる。そう考えていた者達によって、人工ドラゴンのプロト・イプは一ノ瀬未来と統合させる実験を行っていた。実験は成功したが、不死には成れなかった。
むしろその逆だ。ドラゴンの持っている数え切れない魂に体に影響が出た。
それこそ多重人格の原因だ。一ノ瀬未来は望んでああなった訳ではないのだ。
そして、外に出た瞬間未来から放出された魂は世界各国に四散し、未来の先祖の生まれ故郷、日本にも上陸した。
後は、言うまでもないだろう。人類はドラゴンと契約して魔法を使えるはずが、己の魂と契約して魔法を使ってしまっているが故に代償を必要とする「魔法病」を発症したのだ。
未来の体から四散した魂は周りに影響を与え始め、魔法使いは数ヶ月で何人にも増え、我らがその事実を知ることになった半年後にあの島は核によって破壊された。
体を盾として島内の人間を護りきったドラゴンは翼をボロボロにし、死んでしまった。だが、それもまた循環し新たなドラゴンが生まれる。そう思っていた。
それは違っていた。ドラゴンは世界に七匹しか存在できない。人工のドラゴンがその枠を埋めてしまい、残ったのは政府に従順な化け物だけだった。それらを殺してもまた人工のドラゴンが生まれるだけ。
そのドラゴンを作っているのは戦争で殺された人間の魂。
未来はそのたびに苦しみ、人格を侵食されていった。もう妹の顔も思い出せないと泣いていた夜もあった。
しかし、政府を止めるまでは歩みを止めてはくれないだろう。
なあ。未来よ。お主は妹に会うんじゃぞ。
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