魔法使いの夜 ~転校した当日から奇妙な部活に入る~

五郎猫さち

始まり

 今年で高校生になる僕はまた転校をした。


 毎回転校する度に、空気が変わる。そんなものには慣れた。


 だが、このを隠すことに、慣れは来ない。いくら転校して虐めに遭っても、この事を隠してきた。


 辛い。そんな感情ではなく、ただ己が制御できるかどうか。自信が無かった。

 どうか今回だけは普通の生活を送りたい。

 ……まだこの時は、そう思っていたんだ。


 「島崎 章しまざき あきらです。親が転勤をするので、よく転校しています、短い間かもしれませんが、仲良くしてもらえると嬉しいです」


 場がいつものようにすぐに静まった。

 今回は目立たないようにする。そう決めていた。普通の高校生でいるんだ。


「よう。転校は初めてじゃないんだって?お前も大変だな。俺もよく転校したから分かるぜ。」


 目の前に座っている男子生徒が、椅子に反対に跨がっている。

 

「俺は石墨 隼人いしずみ はやと。運動が苦手なのに速そうな名前だろ。今日放課後空いてるか?話したいことがあるんだ」


 軽い口調で話す彼の言葉に、僕は油断していたんだ。この後何が起こるかも知らずに。







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